▶︎すべての写真を見る スノーボーダーとしてアラスカを訪れ、現地の人々や土地柄に興味を持ち、その模様を写真集にして出版するほどアラスカに魅了されていった写真家の山田博行さん。
アラスカの氷河を撮り続ける山田さんに、氷河から感じる“水の循環”について伺った。
僕らの遊び場は、氷河による彫刻物だった
国内のウィンターシーズンが終わる、ちょうど今くらいの時季になるとアラスカを目指す。そのようなライフスタイルを送るスノーボーダーやスキーヤーがいる。
現地では荒天が続く厳冬期が過ぎ、落ち着いた天候が増えてくるタイミングだ。チャーターや乗り合いのヘリコプターで切り立った峰にアクセスし、50度を超えるような急斜面へドロップ。落ちていくような感覚の中で高速ターンを描き、上質なパウダーを味わうのである。
雪質は最上だ。太平洋に近い港町のバルディーズ周辺には、程良い湿り気を含んだ雪が降る。醍醐味はアラスカならでは。“聖地”という呼び声さえあり、世界中のバムによって開拓された1990年代以降、腕に自信のあるビッグマウンテンライダーたちが訪れ続けている。
写真家・山田博行さんにとってもアラスカの入り口はスノーボードだった。世界を代表する雪上の滑り手たちを被写体に、30年近くにわたって芸術的な1枚を残してきたのだ。
当初は類に漏れず日本の冬が終わる頃に現地入りしていた。しかし通い続けるうちに現地に暮らす人たちと知り合い、土地柄に興味を抱くようになっていく。
夏も訪れ、住むように滞在し、その模様を写真集にして出版するほどアラスカに魅了されていった。そして大自然の中での暮らしや風土への興味を深めていく過程で、“なぜ山々が切り立っているのか”を知るようになる。
「理由は氷河でした。アラスカの山がいずれもそそり立つのは、降り積もった雪が溶けずに万年雪となり、やがて巨大な氷が形成されたのち、重力に引っ張られ標高の低いほうへ流れていく過程で浸食されたためだったのです。
言ってみれば何万年もの時間をかけた氷河による彫刻物であり、魚の背鰭のように削られまくったおかげで、僕らスノーボーダーやスキーヤーは楽しめている。そういうことを知って、もう理屈なくすごいと思ったわけです」。
以降、山田さんは氷河の存在に興味を抱くようになっていく。
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