▶︎すべての写真を見る 千代田区立九段中等教育学校で創立時から100年近く続く伝統的な学校行事「至大荘」。臨海施設を拠点に行われるこの行事のハイライトは“遠泳”だ。
主任教諭であり水泳部顧問でもある山口尚己先生に、“海の学校”で得られる学びについて伺った。
100年近く続く海での伝統的な学校行事
靖国神社や千鳥ヶ淵、皇居に程近い都心の公立校、千代田区立九段中等教育学校(以下、九段)。中高一貫校となる同校の4年生およそ160名は皆、7月末の5日間を千葉県勝浦市の守谷海岸で過ごす。創立時から100年近く続く伝統的な学校行事に参加するためだ。
先生や生徒、OBを含めた多くの関係者の間で「至大荘」と呼ばれているこの行事は、同名の臨海施設を拠点に行われてきた。その施設は1924年(大正13 )年創立の同校において27(昭和21)年に成田千里初代校長によって建設されたもの。
成田校長は自由主義的な大正デモクラシーの気風を反映させた、知(確かな学力)・徳(豊かな心)・体(健やかな体)を育む三位一体の新教育を理想とした人物で、その理想のもとに伝統行事「至大荘」は生まれ、目的には次の3つが掲げられる。
① 雄大な大自然の下、遊泳を通じて若人の心身を心ゆくまで鍛錬し、たくましい敢闘精神を身につけさせる。
② 職員と生徒が寝食を共にし、行住坐臥(ぎょうじゅうざが)、闊達剛毅(かったつごうき)、協調互譲(きょうちょうごじょう)の精神を養う最も良い機会たらしめる。
③ しかもこの間、おのずから高校生活の楽しさを味得し、本生活をして本校における意義深い思い出たらしめる。
学校生活の一部として規律正しく、潑剌とした時間を過ごす「至大荘」は、誕生以来変わらず同校を象徴する一大イベントとなっている。その存在感は、“「至大荘」を経験して九段生となる”という言葉も聞かれるほどに大きいものなのだ。
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