渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング
▶︎すべての写真を見る サロン、アパレル、カフェなどが並ぶ賑やかな路地裏に、長い行列ができるうどん店がある。
グラフィカルな看板に、「麺散」のふた文字。ディレクターの岡田茂さんを訪ねた。
渡辺 原宿でうどん店を始めると聞いたときは驚いたよ。茂くんの発想はいつも面白い。飲食ひと筋なのに感性はアパレル的で、いい意味でほかの人とは違う。
岡田 会社の現社長に「好きなように始めていいよ」って言われて。コンセプトから内装デザインやPRなど、全部やらせてもらってます。
渡辺 その社長のマンタくんも昔から知っているけど、当時はふたりが出会うなんて思いもしなかった(笑)。でも結果、マンタくんのリッチな感性と茂くんらしいポップな雰囲気がポジティブなハレーションを起こして、いい店になったと思う。
岡田 自分がこれまで経験したものを、引き出しからいろいろ持ってきたらこうなりました。感覚的な話で、具体的には言いにくいんですけど。
渡辺 わかる。壁には畳が使われていたり、スケボーの板、トイやアートが飾ってあったりと、ストリートと少しハイソがうまく交じり合ったような雑多な感じ。でも要素の一つひとつに意味があって、茂くんの好きなものが素直に表現されている。
岡田 “ガワ”だけの店っていちばんダサいじゃないですか。だから当然、味にこだわる。うちでは讃岐うどんより少しソフトな“関西風讃岐”をベースにした麺を打っています。
渡辺 モチモチで、文句なし。お気に入りの紅生姜天やかしわ天もサクサクで、夜のつまみメニューもあって最高。でもとにかくすごい行列だから、時間帯に気を付けないと(笑)。
岡田 店前で待たせてしまうのは心苦しいんですが、そこはお客さまのご判断。ただ、ようやく入っていただいた店内ではなるべくお待たせしたくない。そこは店側のオペレーションの問題なので。いわゆる三たてのうどんを出しますが、入店から10〜15分でテーブルに出せられるように心がけています。
渡辺 ちなみに、茂くんの地元は?
岡田 浅草です。
渡辺 へ〜、だからなのかも。この店、すごく洒落ているんだけど、丁寧に地域に寄り添っていると思う。その根底には、“下町のおっちゃん的”感覚があるんじゃないかな。だからここで食べている人も、うどんの味はもちろん、原宿という街を本当に楽しんでいる感じがする。
岡田 僕が好きなものをちりばめた店が多くの人に受け入れられる。その現状はありがたく、うれしいです。
オープンから丸6年の今夏には、渡辺さんとコラボレーションしたシェフシャツを発表予定。そちらにも、行列ができるかもしれない。