特集「37.5歳はカラダのまがりかど」
飲み会の翌日がきつい、暴飲暴食がすぐカラダに出る……。37.5歳を過ぎると、着実に老いを感じはじめるもの。さて、老いの入り口に立ったオッサンたちはカラダとどう向き合えばいい? 男らしさは腕っぷしから、というわけで今回はボルダリングによるエクササイズ効果に迫る。
学生時代は引き締まっていたカラダ。歳を重ねた年月だけ、あちこち重たくなった。自慢だった上腕二頭筋も、上下に振ればブルブル震える。若かりし頃を知る奥さんの目は当然冷たいし、子供がぽっちゃりな自分しか知らないのも残念すぎる。
ならばやはり鍛えるしかない。空いた時間に楽しく続けられ、カラダがキュッと引き締まるスポーツはあるだろうか。うーん、やっぱりそんな都合のいいスポーツなんてあるわけ……あった! ここ数年で施設が次々と設立されているボルダリングだ!
というわけで筆者は、秋葉原にあるボルダリング&ショップジム「ビーパンプ トウキョウ 秋葉原店」を訪れ、店長の寿村尚良余さんにそのエクササイズ効果を聞いた。
まるでサーキットトレーニング! 意外に激しいカロリー消費
「ボルダリングにどのようなイメージをお持ちですか?」。
寿村さんの問いかけに、筆者は「頑張って壁を登るイメージです!」と返した。「えーと、はい、その通りです」と答える寿村さんの笑顔がまぶしい。
「ボルダリングは、手の指先から足の指先まで、全身を使うスポーツです。ホールドと呼ばれる石にしがみついて全体重を支えるので、腕も足もお腹も背中も、全身の筋肉が鍛えられます。なので、とってもカロリーを消費して、すっごく疲れます」。
ボルダリングは意外にハードなスポーツだ。自分の体重を支えるだけの握力は当然必要だし、別のホールドへ移るとき、体を壁側に引き寄せるだけの腕力や胸筋も必要。筋トレのパンプアップと同じ状態になる。初めて挑戦する人は、握力を使いすぎてペンが握れなくなることも。
他のスポーツと比べて消費カロリーはかなり高い。国立健康・栄養研究所の資料を参考に計算すると、70kgの人物がジョギングを1時間した場合、消費カロリーが514.5kcalになるのに対して、ボルダリングは735kcal。自重を支えるハードな筋トレと休憩を交互に繰り返すサーキットトレーニングのような要領なので、ここまでの消費カロリーを実現できるようだ。
「週1回のペースで通いだして、たった1カ月で体重が落ちた人もいます。なかには自然と腹筋が割れた人も。ボルダリングには、続ければ続けるほどカラダが引き締まっていくエクササイズ効果があります」。
また、短い時間に集中して挑戦するので、サクッと取り組めるのも魅力のひとつ。
「仕事の合間や会社帰りに訪れて、ボルダリングで気分をリフレッシュするビジネスマンが多くいらっしゃいますね。なかには『仕事に追い詰められた自分をもっと追い込みたいんだ!』と言いながら挑戦する方もいます(笑)」。
めざせ逆三角形! 腕・肩・体幹、すべてが発達してゆくでは次のステップに。長くボルダリングを続けると、カラダはどのように変化していくのか。
「全身運動なので、長く続ければ続けるほど、全身がまんべんなく鍛えられていきます。特に肩と背中を使うので、ボクサーのような逆三角形のカラダを手に入れられますよ」。
自重を支えながら登っていくので、腕や腕と連動している肩の筋肉が大きく鍛えられる。また、体を壁に引きつけたり、ホールドの上で体を安定させる背筋と腹筋が必須。上級コースになるほどこれらの筋肉は発達していく。
「さらに、上級コースになるとホールドが意地悪な位置にあるので、腕いっぱいに伸ばしてホールドをつかんだり、ホールドに足を引っかけるため股関節や膝関節を一生懸命伸ばしたり、柔軟性が求められます。その結果、自然と体が柔らかくなります」。
す、素晴らしい。でも、運動オンチな筆者でもクライミングできるだろうか。
「じゃあ挑戦してみますか? きっとボルダリングの魅力を肌で感じられますよ!」。
実践して感じたボルダリングのさらなる魅力というわけで、いそいそと着替え、寿村さんと一緒に準備体操をこなして壁の前に立つ。改めて壁を見ると、カラフルなホールドがキラキラ見えて、なんだかほっとする。視覚的なリラックス効果もあるようだ。
「クライミングに挑戦する前に、まずはどのホールドを使って登っていくか作戦を立てましょう。どこに右手を置くか、どこに足を置くか、頭の中でパズルを組み立てるように登るルートを考えてください」。
今回は寿村さんにアドバイスをもらって、クライミングのコースを決めた。いざ、ゆかん。
ホールドに向かって手を伸ばし、さらに足を置いて、ひいひい言いながら懸命に登る。手の握力の限界を感じながら、プルプル震える足を持ち上げて、少しずつゴールの頂を目指す。
「そうです! 無事にゴールです!」。
寿村さんの声で、登り切ったことに気づいた筆者。もう無我夢中だった。転げ落ちるように地上に着地!
予想以上のリフレッシュ効果と達成感が頭の中でわきあがる。クライミング中は登るのに必死で、ものすごい集中力を要する。仕事や日常の悩みなんて一瞬にして忘れてしまう。頭がからっぽになるリフレッシュ効果は半端じゃない。
そしてパズルのようなルートを登りきったときの達成感はひとしおだ。全身を使ってパズルをくみ上げた感覚がある。楽しい。全身が悲鳴を上げているけど、なんかもう立てる気がしないけど、めちゃくちゃ楽しい。
最後に寿村さんは、こんな魅力も語ってくれた。
「ボルダリングは子供も挑戦できるので、家族連れもたくさんいらっしゃいます。親子で競い合うように登る姿は、見ていて微笑ましいです。家族のコミュニケーションの場として利用しているお父さんも多いですよ」。
重たくなったカラダに悩む人はもちろん、家族でのアクティビティを楽しみたい人にも、もってこいなボルダリング。なかなかハードだが、それだけ日常の雑念を一気に取り払ってくれる。カラダや仕事にもやもやしたものを感じたときは、ご自分を追い込むくらいクライミングに挑戦してほしい。
【取材協力】
ビーパンプ トウキョウ 秋葉原店東京の中心で最先端の体験ができるボルダリング施設。初心者から上級者まで、幅広い層のクライマーに親しまれている。
住所:東京都文京区湯島1-1-8
電話番号:03-6206-9189
営業時間:平日12:00~23:00/土・祝 11:00~22:00/日 10:00~21:00
http://pump-climbing.com/gym/akiba/取材・文=いのうえゆきひろ