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2018.01.30

からだ

サーフィンこそ、オッサンがすべき究極のエクササイズだ。


特集「37.5歳はカラダのまがりかど」
飲み会の翌日がきつい、暴飲暴食がすぐカラダに出る……。37.5歳を過ぎると、着実に老いを感じはじめるもの。さて、老いの入り口に立ったオッサンたちはカラダとどう向き合えばいい? 今回は楽しみながら鍛えられるスポーツについて。憧れのサーフィンを続けるとどんな肉体を作り上げられるのか、専門家に話を聞いてみた。
40代にもなれば、仕事の責任が増し、周りからの信頼も厚くなる。しかしそんな職場での実績に比例するように、お腹にも厚く重なるものが……。今年こそは、見た目も中身もかっこいい男を目指したいものである。
ならば一念発起、身体をみっちり鍛えたい。そんな折、小耳に挟んだのが、サーフィンは超鍛えられるスポーツだという噂。そこで、どんな身体を手に入れることができるのか、サーフィン専門トレーニングジム「マーメイドサーフ」代表のおぜきとしあきさんに話を聞いた。

サーフィンでまず得られるのは、たくましい背中の筋肉!
健康的に焼けた肌とさわやかな笑顔。そしてTシャツに隠されたスポーティーな肉体。これだ、筆者もこうなりたい! 「僕もサーフィンやりたいんですが」と伝えると、おぜきさんは笑顔でこう返された。
「いいですね、ぜひやりましょう!! サーフィンは見た目より、めちゃくちゃハード。ダイエットにはもってこいのスポーツですよ」。
サーフィンと聞けば、爽快な波乗りの姿を思い浮かべる。しかしおぜきさんが言うに、それはほんの一部。まずは波に乗るため、サーフボードに乗って泳ぐ「パドル」を覚えるのだが、これが本当に難しいらしい。

「パドルで大切なのが、バランスです。どれだけ一生懸命泳いでも、サーフボードが波に揺れて海に転げ落ちちゃう。そこで必要になるのが、背中の筋肉なんです」。
常にサーフボードの上で背中を反らして泳ぐことで、不安定な波の上でもバランスを保てる。サーフィンには、常に背中を反らし続ける強靭な背筋が必須だ。そう言われて初めて気づいた、おぜきさんの背中はめちゃくちゃぶ厚いのだ。

「サーフィンを始めると、背中の筋肉痛にびっくりしますよ。水をかくように泳ぐことで、腕や肩の筋肉も鍛えられますが、なにより背中が一番鍛えられます」。
東京五輪を目指すプロサーファー・野呂海利さんのトレーニング。サーフィンで重要な背筋力の強化をバランスボールの上で行なっている。
それに「腹筋がないと、波に押されたサーフボードでオエっとなりますね(笑)」とのこと。背中を反らしたまま、腹筋も固くしながらパドルをする必要がある。そのため、背筋と一緒に腹筋も徐々に鍛えられていくというわけだ。
多大なカロリー消費に加え、太りにくいカラダの実現も

シェイプアップ効果に優れているのは、パドルという動作の効果だけではない。
「波をつかむために泳ぐこと、サーフボードに乗って波を待ち続けること、これがサーフィンの大半です。水の流れに逆らいながら常に泳いでいるので、どんどんカロリーを消費していきます。あと副産物的なことでいえば、サーフィンを続けると姿勢が良くなります。というのも、背中を使うスポーツなので、鍛えられた背筋にクイッと引っ張られて、自然と胸を張るような姿勢になるんです」。
デスクワークで背中が丸まったビジネスマンにもってこいの効果といえよう。さらに先述のとおり、背中と一緒に腹筋も鍛えられるので、ウエストもキュッと引き締まる。サーフィンを続けると、ビジネスもクイッと上向きになりそうだ。
「上級者になると、身体がさらに引き締まります。上腕三頭筋、三角筋、脊柱起立筋、僧帽筋、大腿筋などをはじめとする筋肉が強靭になり、肩、肩甲骨周り、骨盤などを連動させる運動を続けるので、日常生活では使わない身体の部位が鍛えられるからです。また、サーフィンはバランス力が必要なので、極めれば極めるほど体幹が強くなります。体のブレが小さくなって疲れにくくなり、内臓の位置が矯正されるので便秘にも効果があります。さらに、インナーマッスルがつくと代謝も上がるので自然と太りにくい体になることも期待できると思いますよ」。
続けるほど、身体が筋肉質で引き締まり、全身の歪みが調整されていくイメージだろうか。「つまり海の漢になれるってことですかね?」。筆者の問いかけに、おぜきさんは黙って笑っていた。海の漢はちょっと違うらしい。
とりあえず体験からスタートを。無理をしないのも長く続ける秘訣
取材後、おぜきさんに連れて行ってもらった東京五輪の会場にもなる「釣ヶ崎海岸」。冬の寒さにも負けず、10人ほどが波乗りを楽しんでいた。
しかし、いくら鍛えられると言ってもこれだけ過酷だと、サーフィンを続けられるかちょっと心配。これにはおぜきさんも頷いた。
「サーフィンを始める人はたくさんいます。けれど、挫折してしまう人も多いですね。先ほども言ったとおり、ハードなスポーツなうえに向き不向きが大きいスポーツ。それに海がないとできないスポーツなので環境要因もあるでしょう」。
ただし、ほかのスポーツが苦手だからといって不利、という訳でもないのが面白いところ。筋肉のつき方のバランスがいいと、初回からスルッと波に乗れてしまう人もいるそうだ。
「とりあえず、サーフィンスクールで体験してみるといいですよ。5000円程度で体験できるコースもありますし。道具一式を借りることができるし、海で泳ぐ安全面にも配慮してくれます。とりあえず1回体験して、感触が良かったらどんどん通ってみてください」。
また、サーフィンを続けるコツとして、「無理しすぎないこと」も大切だという。
「程良いタイミングで終わって、いい印象のまま陸に帰る。そうすると、いい印象のまま次回も海に入れる。まだちょっと続けられるけど、この余韻を味わいながら今日は終わろうかなー。そんな大人の余裕を持ってサーフィンを楽しんでほしいですね」。
ーーサーフィンのためにライフスタイルを変えた。
そんな人の話を聞くことがある。長年サーフィンを続けている人は、ハードなスポーツを終えたあとの爽快感や、波をすべる一瞬の喜びに魅せられているようだ。

「私の場合は、昔から釣りをしながら水面や水辺を見つめているのが好きでした。それにサーフィンの時間は、ひとりになる大切なひとときでもあるんです。坐禅と通じるものがあるんですかね」とおぜきさん。
緩んだカラダをみっちり鍛えつつ、海とともに過ごすひとりの時間を満喫できる。サーフィンこそ、オッサンがすべき究極のエクササイズと言えそうだ。
【取材協力】
おぜきとしあき(尾関紀篤)
パーソナルトレーナーとして、著名人を含む10000人以上のボディメイクを行う。20年以上の経験とノウハウを活かし、初心者からプロサーファーまで指導するサーフィン専門パーソナルトレーニングジム「マーメイドサーフ」を開設。『腹凹は太もも運動でつくれる 1日3分週3日でOK!』(SBクリエイティブ)など、多数の書籍も執筆。
取材・文=いのうえゆきひろ
 


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