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地球を再生へ導く、素材革命の裏側

本体の生地には、「リプリーブ アワー オーシャン」を使用した肉厚のフリースを採用。裏地には、同じくリサイクル・ポリエステル100%のタフタを使用し、PFAS(有機フッ素化合物)フリーのDWR(耐久性撥水)が施されている。

本体の生地には、「リプリーブ アワー オーシャン」を使用した肉厚のフリースを採用。裏地には、同じくリサイクル・ポリエステル100%のタフタを使用し、PFAS(有機フッ素化合物)を意図的に使用していないDWR(耐久性撥水)が施されている。


新しいレトロXは、見た目以上に中身が進化している。素材もデザインも、そしてそこに込められた哲学も。それは、単なる製品リニューアルではなく、「原点回帰」と「未来への進化」だ。刷新の根底にあるのが、パタゴニア全体で掲げる「2025年までに全製品をレスポンシブル素材へ」という目標だ。その実現に向けて、レトロXは象徴的な役割を担っている。
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これまで、このジャケットのメンブレン部分にはバージンポリエステルが使用されていた。2017年以降、リサイクルポリエステルへの切り替えは進んだものの、裏地など一部は依然として再生素材ではなかった。さらに、素材変更にはサプライヤー側の技術的な壁もあり、時間がかかった。



そんな中で導入されたのが、「リプリーブ アワー オーシャン(REPREVE Our Ocean)」という新素材である。これは、すでに海や沿岸に流出したプラスチックごみを人の手で回収し、高品質な糸へと再生させる「再生型リサイクル素材」。いわば、「地球上に落ちてしまったゴミを再び命ある素材に戻す」という発想だ。
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従来のペットボトルリサイクルのように管理された廃棄物ではなく、自然界に散らばったプラスチックを対象にするため、難易度は格段に高い。しかし、その困難な道を選ぶのがパタゴニアらしい。


「ナチュラル・ブレンド・レトロ・カーディガン」5万600円/パタゴニア(パタゴニア日本支社 カスタマーサービス 0800-8887-447)

「ナチュラル・ブレンド・レトロ・カーディガン」5万600円/パタゴニア(パタゴニア日本支社 カスタマーサービス 0800-8887-447)


同社ではこうした素材を「リジェネラティブ・リサイクル」と呼び、Better(より良く)からBest(最善へ)という思想を掲げる。地球への負担を減らすだけでなく、自然環境を再生する。その発想の転換が、ブランドの未来を形づくっている。

この考え方は、パタゴニアの「ライフ エッセンシャル」ラインにも波及している。「ネットプラス(NetPlus)」や「リプリーブ アワー オーシャン」など、海洋ごみを原料にした素材開発が進み、草の根活動から始まったプロジェクトがグローバルブランドの柱となりつつあるのだ。




名作は、ただ復刻されるだけでは時代に残らない。素材が、思想が、そして作り手の覚悟が更新されてこそ、次の時代へと息づく。「レトロX」は、その象徴であり、再生する名作として新たな歴史を歩み始めた。

河野優太=写真

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