管理職は「質問し続ける人」になる
ところが、評価に自信が持てるか持てないかは、極端に言えばその評価が真実であるかどうかとは関係ありません。
管理職が自分の知識が明るい領域だからと適当に評価していては、むしろ間違った認識をベースにマネジメントすることにもなりかねません。ですから、本来は、今、スペシャリストのマネジメントに感じている恐怖を、自分と同じ畑のメンバーをマネジメントする際にも抱いておく必要があります。
わからないことを知るには、質問をするしかありません。スペシャリストであろうがなかろうが、管理職はメンバーの実態を掴むために、永遠に「質問し続ける人」でなくてはならないのです。
スペシャリストにはプレゼンをしてもらおう
ただ、自分のよく知らない領域について知ろうと思っても、質問を考えること自体が難しいものです。ふつうのメンバーであれば、管理職は自然に知りたいことが思い浮かび、質問も尽きないことでしょう。
しかし、畑違いのスペシャリストのメンバーのことを知るための質問はなかなか思い浮かばないでしょうから、その場合は、彼らにお願いをしてプレゼンテーションをしてもらうことがよいと思います。
「自分はこの領域に疎いので、皆さんの仕事を完全にはわからないかもしれません。だから、お手数をかけますが、自分にわかるように、皆さんが仕事で出した価値をプレゼンしてもらえないでしょうか」と。
最後は「判断して責任は自分が取る」
スペシャリストのマネジメントの好例が、希代の人心掌握術を持つ宰相、田中角栄です。
彼は大蔵大臣(現財務大臣)に就任したときのエリート官僚を前にした演説で、「皆さんは天下の秀才で専門家。我と思わん者は遠慮なく何でも言ってほしい。できることはやる。できないことはやらない。しかし、すべての責任はこの田中角栄が背負う。以上(抜粋)」と述べました。
これには要素として、スペシャリストへのリスペクトも、スペシャリストへのプレゼンテーションの要望も入っています。そして、重要なのは「責任はトップである自分が取る」と言っていることです。
ここまで言われれば、スペシャリストたちは力を尽くさずにはいられないでしょう。「敬して」「提案を聞いて」「判断し責任を取る」。
スペシャリストのマネジメントとはこれに尽きるのではないでしょうか。