「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは…… 本日の相談者:35歳、サービス業「コロナ感染防止と社会活動の両立と言われて久しいですが、わが社でもそれをもじって“働き方改革と業績向上の両立”を目指すと社長が宣言。
もともと人材不足の中でいくら職場環境の改善を図ったとしても、働き方改革と業績の両立なんて、ムリだと正直思ってしまいます。管理職の自分が残業してなんとか結果を出すしかない、とあきらめています」 。
| アドバイスしてくれるのは…… そわっち(曽和利光さん) 1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。 |
働き方改革を目指さない選択肢など無い
相談者のお悩みは切実だと思いますが、一方で社長が働き方改革と業績向上の両立を目指すのは当然、とも思います。
就活ブログ運営を行う株式会社L100による「2023年度卒業の就活生が企業を選ぶ上で最も重視するポイントの調査結果」によると、「働きやすさ」が40.3%で、「仕事のやりがい」(24.3%)、「福利厚生の充実」(7.7%)、「企業理念やビジョンに共感できること」(7.4%)を抑えて、ダントツの1位でした。
つまり、少子化により構造的に若手が少なくなっていく現代日本において、人材不足を解決するために採用力をつけようと思えば、さまざまな人が働きやすい会社を目指すという会社の選択は、至極当然のことです。
むしろ、目指さない選択肢など無く、いくら現場が大変だったとしても(実際、大変だと思います)、それを嘆いても仕方のないことです。
実現すると経営者は「できるじゃん」と思う
ただ、今回の相談者のように、メンバーが働きやすくなるように、残業をして力技で乗り切るというのはご自身でも十分お分かりだと思いますが、けして良い策ではないでしょう。
もっと言えば、周囲を楽にするために、自分が単純に頑張る方法は、本来やるべきことを先延ばしにするだけで、むしろやってはいけないことかもしれません。
経営者の側から見れば多少厳しいかなと思いつつ指示した、時短などの働き方改革を力技で現場が実現してしまったら、単純に「なんだ、やっぱりできるじゃないか」と思うでしょう。
そして、本当は管理職などがかなり無理をしていることも知らず、これからもさらなる働き方改革の指示が飛んでくるだけのことです。これでは、まさに無間地獄になってしまいます。
「できない」と言う勇気を持つ
では本当に管理職がすべきことはなんでしょうか。それは「できないものはできない」と勇気を持って経営者に告げることです。
ビジネス界では「できない理由を言わず、どうすればできるかを考える」ことが優秀という言説が浸透しているので、意識の高い管理職の人ほど「できない」と発言するのは評価が下がるようで、なかなか言えないかもしれません。
確かに何の工夫もせず「できない」と言っている人はダメでしょうが、考え抜いたうえで、それでもどうしてもできないのであれば、「できない」と言うべきです。
無理に残業して管理職が体を壊しても、「そこまでしろとは言っていない」と思われるのがオチです。
2/2