当記事は「FLUX」の提供記事です。元記事はこちら。 アーティストであり、人気のTikTokクリエイターでもあるデーン・ナカマさんは沖縄にルーツを持つ日系ハワイアン。2021年にハワイで初めて開催した個展では、ローカル文化への愛を示しつつ、ハワイのありのままの現実もやんわりと表現している。
「この部屋は靴を脱いで見るのがいちばんいいと思うよ」。画廊の中の一室に私を招き入れる前に、アーティストのデーン・ナカマさんはそう言った。床に人工芝が敷き詰められている。「この芝、かなり高価だから、ぜひ」。
2021年3月から4月にかけて、ハワイシアターセンターのギャラリーで開催された『
むかしむかし』は、ナカマさんにとってハワイで初めて開いた個展だ。ローカル文化への目くばせがあちこちに仕掛けられていた。裸足になるのもそのひとつ。わかる人にはわかる、という精神が全体を通して貫かれていた。
例えばある作品では、ルーバー窓(※訳注 横長のガラスをブラインドのように何枚も並べた窓)を額縁がわりにして、開いたガラスの向こうに雨の降る青空の絵を見せている。窓枠には、粘土で作った緑色のトカゲがお茶目にくっついている。
別の作品では、「paradise」という英単語が上下さかさまに、
リヒムイの色で描かれている。ロコの名物、中国から持ち込まれたドライプラムのお菓子リヒムイに、ハワイで育つということを重ねているのだ。
「初めて口にするときのリヒムイって、最高においしいとか、そういう感じじゃなくて、すぐには慣れないよね。甘くて、しょっぱくて、すっぱいんだから」とナカマさん。現在21歳で、カリフォルニア芸術大学の4年生だ。「だけど、パラダイスに住むって、本当はそういうことですよね」。
2020年3月の春休み、ナカマさんは卒業制作のリサーチをするつもりでハワイに渡った。卒業制作では、ハワイのローカル言語と、ハワイのサトウキビ農園に住み着いた移民の歴史に焦点を当て、ナカマさん自身のルーツ――先祖は日本人で沖縄に住んでいた――とも結び付けたアート展をするつもりだった。だが、そのタイミングでパンデミックが到来した。
ナカマさんの2021年の個展『トークストーリー』。ローカル文化へ意味ありげな目くばせがちりばめられている。
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