「37.5歳の人生スナップ」とは…… 未曾有のパンデミックで死を意識することも増えたこの2年で、生き方を見つめ直す機会を得た人もいただろう。5年前に余命宣告を受けて以来、死と向き合って生きてきたラッパーのダースレイダーは、むしろこのコロナ禍の社会を冷静に見つめてきた。
医者が宣告した“タイムリミット”まで残り4カ月に迫った今年11月、彼に2度目のインタビューを敢行した。
人生2回目の“死の淵”に臨む
「
前回のインタビュー直後の2019年7月、実は代謝性のアシドーシスという症状が悪化して死にかけたんです。搬送先の病院で『なんでこうなるまで放っておいたんですか!』って怒られました(笑)」。
アシドーシスとは血液中の酸が過剰生産されることで吐き気や嘔吐、疲労が起こる症状をいう。重症化すれば心臓に問題が生じ、血圧の低下や昏睡、最悪の場合は死に至ることもある。
大阪、京都、博多、沖縄のツアー真っ只中だったダースレイダーは体調の変化に気付きつつも、ライブで放出されるアドレナリンで誤魔化しながら、なんとか当初のスケジュールを全うした。
しかし、帰京した数日後には自力でトイレに行くこともできない状態まで体調は悪化。病院では「一日遅れていたら死んでいましたよ」と告げられたようだ。本人はICU病棟に入院した当時をこう振り返る。
「お世話になっていた主治医が辞めたこともあって、病院を受診できない空白の2カ月があったんです。そこで僕の体調は一気に悪化して、血液検査をしたら血糖値がすごい数値になっていました。
余命宣告を受けたとはいえ、どこかで『まだ大丈夫だろう』と高を括っていたところもあったんですよね。でも、やっぱりいつなんどき、どうなってもおかしくない身なんだなって自分を戒めました」。
“ド派手な病人”を演出する理由
死の淵から生還したのはこれで2度目。
自他ともに認める強運の持ち主は2週間で退院することになったものの、顔は血色を失って幽霊のように真っ白。成人してから最も軽い体重にまで落ち、ガリガリに痩せ細った。
ここでダースレイダーは気を落とすのではなく、逆に「ド派手な病人」を演じる。細い体にSサイズやレディースのTシャツを着て、パンクスのファッションを楽しんだ。黒い髪も真っ赤に染めたという。
「弱っている僕に会いにきた友人は、豆鉄砲を食らった顔をしてましたよ。なんで死にかけた病人の髪が真っ赤なんだって(笑)」。
ダースレイダーが病人らしからぬ風貌を演出するのにはワケがある。
「しょげかえらないでファッションも髪型も楽しむ。このタイミングにしかできないことだと思って、どんどんやる。そうやってネガティブをポジティブに転換して乗り切ってきたんです。
それに、世間が思う『病人はこうあるべき』っていうイメージや『病人らしくふるまえ』っていう同調圧力を覆したい思いもやっぱりあるので」。
2/2