地域の人たちと共創しながら海に豊かさを取り戻す

広大な海が開発フィールドとなる洋上風力発電の可能性は大きい。賦存量も日本の太陽光発電が150GW(1億5000万kW)であるのに対し、洋上風力発電は1600GWと5倍以上を誇る。
再エネ事業と藻場再生が完全にリンクしたのは、軸足を洋上風力発電にシフトしたことによる。
その背景には政府によるふたつの指針表明があり、ひとつは2050年にカーボンニュートラルを目指す宣言。もうひとつは洋上風力発電を30年までに1000万kW、40年までに3000万〜4500万kWを導入する目標数値が掲げられたことだ。
ちなみに1000万kWは一般家庭約600万世帯分の電力を賄う規模とされ、現在の風力発電による発電量の約170倍になるとされる。
こうして国の成長戦略に基づき洋上風力発電に進出。開発は大規模だ。そこで地域との会話を重視したと小笠原さんは言う。
インフラックスのグループ会社、八重山列島カーボンフリーファームでは、沖縄県の石垣島で温室効果ガスのひとつ、メタンを減らす事業「八重山カーボンフリーファーム」を計画中。
「一見さんはお断り。最初の頃、漁協をはじめ地域の皆さんはそのような雰囲気でした。たまに東京から行って挨拶をしても、次に伺うときには忘れられているもの。足繁く通ってコミュニケーションを図ることが大切だろうと考えたんです。
そこで最初は九州の佐賀。次に青森、北海道という形で、洋上風力発電プロジェクトを進めるエリアに13カ所の拠点を設けてきました」。
大気中のメタンの多くが牛のゲップによるものから、メタンを抑制する給飼法で牛を飼育。メタンレスなブランド牛「脱炭素牛」の育成に励み、また改築中の牛舎(写真は完成予想図)で温室効果ガスゼロの牧場経営を行うなど環境に優しい事業展開を目指す。
地域の人たちとの会話から浮かび上がったのが漁業従事者の抱える問題だ。藻場が減り、漁獲量が減ったというもので、その声が藻場事業の礎となった。
「進行中の事例として紹介できるのが、佐賀県唐津市の佐賀玄海漁業協同組合と締結した包括的連携協定です。
カーボンニュートラル実現に向けた共創という形で、持続可能な水産業による経済活性と、ブルーカーボンクレジットを取り入れた地域創生を推進する取り組みをしています。具体的には、まず玄界灘海域の調査と検証を行い、のちに藻場再生を行う予定です。
同地区では、10年に1万282トンあった漁獲量が19年には3006トンにまで減少した現状があります。海洋環境を回復させることで漁業を再生するなど、地域の活性化に貢献していきたいと考えています」。
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