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2025.03.28

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海の砂漠化を解消!再生可能エネルギー企業「インフラックス」が取り組む“藻場再生”の実情



「The BLUEKEEPERS project」とは……
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日本各地の沿岸で深刻さを増している磯焼け。磯がなくなり、海草や海藻がなくなり、ひいては魚介が減っていく……。

こうした出口の見えない負のスパイラルに一筋の光を当てるのが、再生可能エネルギー企業「インフラックス」の藻場再生事業。その実情とは?
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藻場を人工的に造成し、深刻化する磯焼けを解消する

日本沿岸の藻場が1990年代に比べ平均20%も減少している主要因が磯焼け。インフラックスは磯焼け状態にある海の藻場再生で、地域の課題解決に貢献。同プロジェクトにおいては東北大学と共同研究も行っている。

日本沿岸の藻場が1990年代に比べ平均20%も減少している主要因が磯焼け。インフラックスは磯焼け状態にある海の藻場再生で、地域の課題解決に貢献。同プロジェクトにおいては東北大学と共同研究も行っている。


日本の沿岸では“海の砂漠化”とも呼ばれる磯焼けが進んでいる。沿岸の浅瀬に息づくワカメやコンブなどの海藻類が減少・消失し、ついには繁殖しなくなるのだ。
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主な要因には、温暖化による海水温の上昇、森の荒廃や沿岸開発等による海に流れ込む養分の減少、食害などが挙げられている。

磯焼けが進むと海底は岩肌が剥き出しになり、藻場を棲みかとしていたアワビやサザエなどの魚介類も減る。生き物が寄りつかない海は、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」と逆行する現象であり、漁業従事者にとっては待ったなしの死活問題となる。

こうした日本の海の暗部を知り、藻場再生を事業化した企業がインフラックスだ。磯焼けの改善、藻場の再生は環境問題への重要な取り組みだと捉え、植物プランクトンを育てるフルボ酸鉄を人工的に作り磯場に設置。藻場の造成(回復)を目指している。

フルボ酸鉄とは、森林の腐植土壌に存在する有機物であるフルボ酸が、土中の鉄分と結合し生成される物質だ。海中のプランクトンや藻の成長を促す養分であり、もともとは雨で流され川から海へ流れ込んでいた。

だが高度経済成長期以降、ダムを造り、治水のため河川を整備してきたことを一因に、海へ流れ込みづらくなってしまった。その結果としての磯焼けなのである。

それにしてもインフラックスの主力事業は再生可能エネルギーの設計・開発・実施だ。なぜ藻場の再生を手掛けることになったのか。

インフラックス 取締役 兼 バイオ部門統括 地域創生農山漁村推進部副部長 小笠原正人さん●青森県出身。エネルギー業界に身を投じて15年。同社でバイオ事業、地域創生事業に携わる。またグループ企業「MOBA再生」の代表取締役でもあり、インフラックスグループにおける藻場再生事業の推進役を務める。

インフラックス 取締役 兼 バイオ部門統括 地域創生農山漁村推進部副部長 小笠原正人さん●青森県出身。エネルギー業界に身を投じて15年。同社でバイオ事業、地域創生事業に携わる。またグループ企業「MOBA再生」の代表取締役でもあり、インフラックスグループにおける藻場再生事業の推進役を務める。


「フルボ酸鉄の生成には再エネ事業とは別に取り組んでいました。鉄工所に余っている鉄屑と、ダムの土泥の中にあるフルボ酸を組み合わせると海藻が好むフルボ酸鉄になることから、土木系の建設会社や電力会社はよく研究していたんです。

当時太陽光発電が主軸だった弊社も同様の事業環境にあり、トライすることになりました」。

そう説明するのは同社で藻場再生事業を統括する小笠原正人さん。続けて、まだ収益性が見えていない状況ながら事業を続けていたあるとき、東京都から相談が入ったのだと言った。

「伊豆・大島の漁師から藻場が減少し魚が減っているという訴えがあったらしいんです。そこで東京都が伊豆・大島でフルボ酸鉄を利用した藻場回復実証実験を行うと聞きました。

私たちも参画を決め、以来10年間にわたり藻場再生の知見を蓄積してきたのです」。

まだ洋上風力発電へシフトする前であり、ブルーカーボンという言葉も一般的ではなかった時代。海との縁は薄いながら「やろう」と決めたプロジェクトは、輝かしい将来が約束されない投資案件。

そして時が流れ、主力事業のひとつとなったのだから面白い。
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