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たった一人のスターを生み出せ

ただ、現状は「小粒上場」とも揶揄されるように、上場時の時価総額が100億円未満に止まるケースも多いという課題がある。長野は、今後スタートアップエコシステムを活性化させるには、たった一人の「スター起業家」を生み出すことが重要だという。

例えば米国のシリコンバレーも、1975年にマイクロソフト、1976年にアップルが創業されたことで活性化された。長野が定義するスターはユニコーン。1000億円を超える時価総額での上場だ。
 
「スターの原石を見出して戦いのリングに上げていくのが僕らの仕事です。そのうえで、まずは自分が自分の仕事に燃えて起業家に向き合うことが重要。あのバカの熱量は、VCの仕事にも役立っています」
 
今後、反骨精神をもった若手起業家は生まれるのか。スタープレイヤーを輩出するにはまず、起業家の母数が必要となるが、いまは創業直後でも多くのスタートアップが数千万円の資金調達ができ、人材面でも大手企業などから流入し始めており、起業のハードルは低くなってきている。難しいのは、起業家精神は生み出そうとして生まれるものではないということだ。
 
「反骨精神って、その人の人生そのものから生まれるので、教えて得られるものではないんですよね。よく、サッカーのストライカーは、幼少期から天性の点取気質をもっているから育てようとして育つものではないと言いますが、起業家も同じです」
 
真田も、あのバカで「子供の頃から気合でケンカに勝つ天真爛漫なガキ大将。議論すれば、とにかく屁理屈をこねて負けない。高校と予備校ではサッカーに明け暮れ、予備校サッカーリーグをつくるなど卓越したネットワーク力と行動力を持っていた」(中略)と書かれている。
 
加えて、いまのZ世代は、生まれながらにしてモノに溢れて食事に困らない時代を生きてきたため「反骨精神が足りない」という見方もある。
 
ただ長野は「それは自分の時代も言われてきた。エジプトのピラミッドにも『いまの若者は気概がない』と書かれていたと聞いたこともあります(笑)」と一蹴する。実際に、スターになりつつある起業家も生まれてきているといい、スキマバイトアプリ、タイミーの小川嶺(27)、国内アパレル企業で最も若い年齢で上場したyotoriの片石貴展(30)を挙げる。
 
あのバカの頃から時代は変わり、起業のハードルは大きく下がった。その影響で、長野が関わってきた若手起業家のなかには、「一つ失敗をするだけですぐに事業をやめてしまう人も増えている」という。しかし、失敗した時こそ、「あのバカ」の出番だ。

一度失敗をしても、ピボット(事業転換)を考えるなかで、反骨精神が剥き出しになるような事業のタネが見つかるかもしれない。個人負債数十億円、拉致監禁までも経験してもなお、新たな事業に挑む真田のような姿は、失敗から再起するエネルギーになるはずだ。






文=露原直人
Forbes JAPAN=記事提供

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