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2024.03.26

ライフ

オブジェのような靴べら。ノンネイティブ藤井隆行が完璧と賞するマルニ木工のデザイン

片手で取り外せるよう、台座にはスチール製の重しを内蔵。メープル材を使用し、カラーはナチュラルホワイトとブラックの2種類が用意されている。W60×D60×H550mm 600g 3万7400円/マルニ木工 03-5614-6598

片手で取り外せるよう、台座にはスチール製の重しを内蔵。メープル材を使用し、カラーはナチュラルホワイトとブラックの2種類が用意されている。W60×D60×H550mm 600g 3万7400円/マルニ木工 03-5614-6598

「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……
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靴べらなんて、いわゆる靴べらの形しかありえないと思っていたので、動物の角のようなこのフォルムは衝撃でした。

細長い円錐形の上部を持ち上げると、斜めに割れて靴べらになり、台座には内蔵された磁石によってぴたっと固定されるようになっています。

実用的でいっさい無駄のないデザインはnendoの佐藤オオキさんによるもので、それを高度な技術で実現させたのはマルニ木工。どちらも流石としか言いようがありません。

職業柄、このデザインにいたるまでの過程をつい想像してしまいます。持つ部分の太さ、台座の重さ、磁石の具合などをいろいろ試し、さらに人間工学にも基づいたうえで最適解にたどりついたのではないでしょうか?

ミニマルでありながら、「これ何?」と違和感を抱かせるのも優れた点。手作業で先端の丸みを作り、継ぎ目の木目もぴたりと合わせたマルニ木工の技術にも脱帽です。

ここまで完璧なモノを作りながら、ブランド名を入れないところにも会社としての矜持を感じますね。まさに“未来の民藝”です。

実は高校生のときにプロダクトデザイナーに憧れていて、美大のプロダクトデザイン科と空間デザイン科を両方受験しました。

結局、空間デザイン科を選び、気付けば現在はファッションの仕事をしているけれど、もしあのとき違う選択をしていたら……と時折考えることがあります。

ファッションは変わり続けるものだから未完成で成立するデザインで、時代の気分がとても大切。でもプロダクトデザインは一度作ったらずっと使われ続けるものなので、限りなく完成形である必要があります。

最近はコラボを筆頭に、いろいろなモノ作りに関わっていますが、やはり僕には良い意味で適当さが求められるファッションが性に合っているような気がするし、アプローチが反対だからこそ、プロダクトデザインを心からリスペクトしているのです。
藤井隆行●東京を代表するブランド、ノンネイティブのデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。「娘が大学入学でいよいよひとり暮らしが始まります。それ用に家電、家具などを見ていますが、昔と違ってどれもおしゃれで機能的。30年前とは大違いで羨ましいです(笑)」。


竹内一将(Ye)=写真 町田あゆみ=文

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