目指すのは自社農園自給率0%
──料理に使う野菜も敷地内の農園で造っていらっしゃいますが、自社農園で野菜も作っているのはどうしてですか? 現在は4000㎡の農園で、生姜、にんにく以外の野菜はほぼ全て自社農園から賄っています。自社農園をやる大きなメリットは、野菜や植物の生育ステージを知ることができること、その中で、自分が欲しい素材は“いつのどの部分なのか”を見極められることです。
市場で流通する野菜は、シーズンかつ状態が決まっています。その“売れる状態”を目指して農家は作っているわけですから。ただ僕らが必要な素材というのは、必ずしもその状態に当てはまらない。例えばネギでも、食感を愉しみたいのか、香りをつけたいのかで、ほしいパーツが変わってきます。ネギの香りを出したいなら、ネギの花を載せればいい。
ただネギ坊主(ネギの花)がつくと、そのネギの市場的価値は下がってしまいます。自分で農園レストランをやれば、そこに価値を見出すことができるし、欲しい状態まで待って自由に使うことができるんです。
野菜は市場に出ている形が「完成形」ではないんです。「その植物の本当の魅力は何か」を観察して考えられることは、ものすごく大きな利点です。
合わせたワインも2005年産、地元リオハの熟成ワイン。
──将来的に自給率100%を目指しているのでしょうか? むしろ逆で、最終目標はうちの畑がなくなることです。レストランがあることで村の収益を確保できるのが一つの大きな目標なので、他に野菜を作れる村人がいるのなら、自分でやる意味がないと思っています。例えばトマトはあの農家さん、生姜はあのおじいちゃんみたいに得意な人に頼んで、「今どんな感じ?」とコミュニケーションを取りながら一緒にやっていきたいですね。そうすれば、村の皆でレストランができる。
レストランは結局「家」だと思っていて、村のプレゼンテーションでもあるんです。「これがうちの思う、一番幸せで最高な状態」というのをレストランの在り方を通してプレゼンしたいうのが将来的な目標です。最低限のかじ取りは必要としても、最終的に僕がいなくても回っていく状態が良いと思っています。
植生の観察が、料理のアイディアにも繋がる。蕎麦やせり、三つ葉など日本らしい食材も。
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