▶︎すべての写真を見る おそらくその名が知られているのは「美食の街」としてだろう。
ミシュランの星付きレストランが点在し、石畳の旧市街にはせんべろ酒場的なバルが軒を連ねる。先進的な味も庶民的な味もコンパクトな街の中で楽しめるところが大きな魅力とされているからだ。
そんなスペインの文化都市サン・セバスチャンの街づくりについて、市議会戦略計画室のジュディス・モレノさんに話を伺った。
ワールドクラスの文化資源に溢れる街
スペイン北東部の大西洋岸に位置するサン・セバスチャン。
2023年11月現在、スペインへの直行便が就航していない日本からはアクセスが便利だとは言いがたく、隣国フランスのパリなどを経由してスペインのビルバオに入り、そこから陸路。もしくはパリから国内線に乗り換えて同国のビアリッツなどに入り、同じく陸路を経て、ようやくたどりつくことができる。
ただ、丸一日近い移動時間を要する“ちょっと不便”な地理的状況が、街の神秘性を高めてもいる。「一度は訪れてみたい」といった旅欲をくすぐる要因となるのだ。
そして、これまで5度ほど訪れたことのある身としては、それだけの時間をかけても行く価値のある場所だと伝えたい。食もさることながら、滞在を満たす文化的コンテンツが多くあるためである。
たとえば、海が広がり、波があり、各国からセレブリティが集う70年超の歴史を誇る国際映画祭があり、サッカーのスペイン1部リーグに属するレアル・ソシエダのホームであることから世界基準のゲームが観られ、夏にはジャズフェスティバルとクラシックの音楽週間がある、という具合。
しかも、そのメニューのいずれもが各界のトップ・オブ・トップに位置づけられているところに、この小さな街のすごさがある。
加えて街の中心部は歩いて散策できるほどのスケールである。そのためショートステイだったとしても、いくつものワールドクラスを堪能できる点も抑えておきたい。
こうしたプロフィールに少しでも触れると、“奇跡の街”とさえ言いたくなる。続けて、「なぜサン・セバスチャンは国際的な文化資源に溢れる街となったのか」という疑問が浮かんでくる。
この問いに対して、「要因のひとつは街のルーツにあります」と言ったのは、同市の市議会戦略計画室に勤めるジュディス・モレノさんである。
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