▶︎すべての写真を見る 色鮮やかで風抜けの良い服が並ぶ、湘南・葉山のショップ「SUNSHINE+CLOUD」。
その代表 高須勇人さんに、葉山だから生まれる洋服について伺った。
葉山で暮らしているとシックなものは作らない
カリフォルニアのような陽射しが強く、からりと乾いた土地を訪れ、店に入ると、鮮やかな色の服に目を奪われることがある。
真っ青で大きな空や緑が眩いパームツリーをはじめ、天然色が豊かな光景がそこかしこにあるためか、普段の東京暮らしでは手にしないビタミンカラーのカットソーやニットが気持ち良く着られそうに思えてくるのだ。
けれど、そうしてちょっとしたローカル気分を楽しみ帰国をすると、どこか浮いているような気分を抱く。オレンジやスカイブルー、イエロー、ピンクといった華やかなカラーを身に纏う人を東京の日常で目にすることは少なく、「自分だけがカラフル?」という思いに陥るのである。
だからSUNSHINE+CLOUDの服を見たときには、店のある葉山の見え方が変わった。
1時間ほどのドライブで着く東京よりもむしろ、カリフォルニア、フランスやスペインのビーチリゾート、イタリアやブラジルといった開放感に溢れるラテンの国々に似た風土を持つ場所なのではないか。そう感じたのだ。
葉山に暮らし、葉山で服を作る高須勇人さんも、取材時にはピンクのコーデュロイシャツを着て現れた。それでいて存在がまったく浮いていない。葉山という場所がそうさせているのだろうか?
「光の加減や湿度などの空気感。気候や風土によって作られる服は変わるものですよね。
色にまつわるエピソードは葉山でも起こりうることで、『お店で見たときにはテンションが上がったんだけど、東京で着るとアレって思うんだよね』というお客さまがいます。
都会は黒を基調とするシックなスタイルが多いから、浮く、目立つということですよね」。
海が近く、山もある。自然に近い葉山暮らしはクリエイティブに小さくない影響を与えるのだ。
「葉山にいると黒っぽいものは作ろうと思いません。鮮やかな色が多くなるのも、自分が好きな色を選ぶとそうなるというだけで、意識して選択したわけではないんです。
加えて肌にまとわりつかない風通しの良さ、パンツインせずラフに着ることを前提にした着丈の短いシルエットも僕のベーシックになっています」。
Tシャツにもこだわりが見られる。糸はカナダのものを使い、編み立てはアメリカ西海岸で行う。染めやプリント、刺繍といった加工は日本で。すると着心地が大らかなTシャツになるのだという。
また取材時は秋冬物がラインナップする直前。店内にはリネンのシャツや、半袖のカットソーなど春夏のアイテムがディスプレイされていた。
いずれもがカラフルなバリエーションを見せ、TシャツにはALOHAやBIRD、HONOLULUといったワードがあしらわれている。
興味深いのはどれもが説明調でなく絵画的であることだ。そのため目にすると想像力が発動し、そこに豊かな色彩が絡むと楽しい気分が生まれてくる。
着ると高揚するTシャツ、それは葉山で暮らして育んだ、高須さんの言葉と色彩に対する感覚の賜物なのである。
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