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2023.09.11

ファッション

「日本サイズ」表記の盲信は絶対NG!「パラブーツ」のサイズ感をスニーカーと徹底比較


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靴、特に革靴のサイズ選びで失敗した経験のある人が、以前に増して多くなっているようだ。

靴のサイズ選びを間違えてしまうと、足の痛みや脚部の違和感、さらには腰痛や疲労の増加など、健康悪化にまで直結する……。

そんなトラブルを防ぐべく、ラバーソールの快適性を世界に広めた立役者「パラブーツ」を訪問。同社・青山店店長の岡部貴範さんから、定番モデルの特徴やサイズ感など、購入時に役立つ基礎知識をご教授いただいた。

今回紹介するのは、「シャンボード」「アヴィニョン」「バース」「コロー」、そして「ミカエル」の人気モデル5足だ。

パラブーツの歴史と人気の秘訣

パラブーツ青山店店長の岡部貴範さん

パラブーツ青山店の店長、岡部貴範さん。


パラブーツは、1908年に設立したリシャール・ポンヴェール社の代表ブランド。発祥地は、創業者であるレミー=アレクシス・リシャールの出身地と同じく、フランス・アルプスの麓にある小村・イゾー。

同社が今日でも得意とし、自社生産にこだわるラバーソールは、彼が1926年に渡米した際に見たラバーブーツをヒントに製法を確立した。名前の由来は、原材料である天然ゴムを輸出するブラジルの港湾都市「パラ」と、その「ブーツ」を掛け合わせたもので、翌年に商標登録されている。

パラブーツのルーツは、アルピニストたち用の登山靴。ゆえに堅牢な作りで、長時間履いても疲れにくい。



第二次大戦後、スキーやスケート用のブーツなども展開し、一時的に中心軸をシフトし活況を呈した。しかし、1970年代から’80年代初頭にかけては、石油ショック等の影響で経営危機に直面。

これを救ったのが、後述する「ミカエル」だ。当時、トレンドの最先端だったイタリア・ミラノで大ブレイク。それを機に、ファッション性と実用性とが、高度に両立する今日の路線を確立した。

日本でも、’80年代からコアなファンに人気があったよう。ビジネスファッションのカジュアル化や、悪天候にも対応しやすい革靴の代表として、特に21世紀に入って以降、人気がうなぎ上り状態だ。

パラブーツの魅力は、アッパーとソールにあり!



パラブーツの実用性を象徴するのは、やはりオリジナルのラバーソールだろう。

登山靴製造のノウハウを生かし、本来の使用環境に最適化された厚みや硬度は、街履きとしても頼りになる。

さらに、ノルヴェイジャン製法やグッドイヤー製法で底付けするものは、一般的な仕様である、底面のクッションにコルクを用いていない。その代わりに、アウトソールの上面を櫛状に段差をつける、無二の構造を採用している。

このお陰で、中底の「沈み込み」が少なくなり、経年しても底面の履き心地が変化しにくくなっている。

リス・ワクシーレザーを使った、ミカエルのアッパー。

リスワクシーレザーを使った、ミカエルのアッパー。


また、リスワクシーレザー(通称:リスレザー)を代表とするタフで使い勝手の良いレザーアッパーも、パラブーツの高い実用性のシンボルと言える。

実用的でありながら、見た目の印象をドレッシーに仕上げているあたりは、さすがファッション大国・フランスの靴メーカーだ。デニム姿にも、タイドアップしたスーツ姿にも合わせられる、クロスオーバー感の高いモデルが揃っている。

モデルにより異なるパラブーツの「サイズ表記」

上がヨーロッパサイズ表記で、下がUK表記になっている。

上がヨーロッパサイズ表記で、下がUK表記になっている。


各モデルの登場時期にもよるが、実はパラブーツはモデルによってサイズ表記が異なる。これは、世界的にも極めて稀なケースだ。

具体的には、日本に輸入されるモデルの大半が「UKサイズ表記」となっているが、一部のサンダルと人気モデルのひとつである「ミカエル」については「ヨーロッパサイズ表記」になっている。

左がコローのUKサイズ表記で、右がミカエルのヨーロッパサイズ表記。

左がコローのUKサイズ表記で、右がミカエルのヨーロッパサイズ表記。


日本ではメンズの場合、これを以下のような「日本サイズ表記」に便宜的に置き換えて、フィッティングの参考資料としている。

パラブーツのメンズのサイズ表記(UK4、4.5はない)

パラブーツのメンズサイズ表(ヨーロッパサイズの38、38.5はあるが、UK4、4.5のサイズはないのでご注意を)


しかし、これはあくまで「便宜的な」置き換えに過ぎない。なぜなら、

・ヨーロッパサイズとUKサイズ(USサイズも):製造時に用いる「木型の大きさ」を示している。

・日本サイズ:実際に靴を履く「人の足長」を示している。

という、決定的かつ永遠に交わらない「基準の原点の違い」があるからだ。

例えば、同じ足長25.0cmの人でも、土踏まずの長さや足囲の違い次第で、UKサイズ6.5が最適な場合もあれば、UKサイズ7のほうがベストな場合もありえるのである。



これに関して岡部店長からは、さらに注意すべき点も。「実はこの変換もあくまでメンズのみで有効で、レディースの場合はまったく異なる変換式になります」(岡部貴範さん、以下同)。

えっ、どういうことだ?

「例えば、日本サイズが25.0の場合、メンズはUKサイズ6.5ですが、レディースのUKサイズでは5.5となるわけです」。

これを知らずに「日本サイズ(25.0)」だけを見てしまうと……

ネットオークション等で、誤ってレディース(UK6.5ではなくUK5.5)のものを買ってしまった……といった悲劇が起こりえるのだ。

岡部店長によれば、実際にこの種の相談に来店される方もいるそう。「日本サイズ」表記を盲信することのないよう、くれぐれも注意してほしい。


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