成功の秘訣は失敗を引きずらないこと
ブルートーカイ コーヒー ロースターズは2013年に創業。それまでインドは世界有数のコーヒー生産国でありながら、高品質のインド産コーヒーのほとんどが欧州などへ輸出されていた。
マットは知識のないゼロの状態から焙煎とカッピング技術を学び、インド産の高品質なコーヒーを国内の農園で作り、その魅力を広めていくことを決意。そこから10年近くの月日が流れた。
「ほかのコーヒーの生産国では、森林を伐採して工業化し、コーヒー豆を摘むということをしているところが多いのですが、インドでは伐採が禁じられているので、自然環境を維持しながらサステナブルな手法で栽培をしています。
さらにインドでは厳しい労働法が定められていて、各地のコーヒー農園で働く労働者の方たちは賃金、労働時間、休暇取得などに関して保護されているので、とてもフレンドリーな職場環境となっています」。
ちなみに、マットは同社を創業する以前に2度、大きなビジネスにチャレンジしている。
「最初は、ルーマニアで何年かレストランを経営したのですが、うまくいきませんでした。その後、インドでビールを作ろうと思い、自家醸造に取り組みましたが、こちらもあまりうまくいかず、実際に醸造所を開くまでにはいたりませんでした」。
2度の失敗はかなりショックが大きかったのではと訊くと、マットは意に介さない。再びあの優しい笑顔を交えながら。
「ビジネスにおいて失敗はつきものです。まあ今日失敗したとしても、明日はチャンスがあると思っていますから。さらに私自身、あまり失敗を引きずらないショートメモリーなタイプですから、ショックを受けなかった要因はそういう性格にもあると思います」。
インドでは“世界三大紅茶”のひとつに数えられるダージリンの産地であるなど、圧倒的に紅茶文化が浸透している。
自国のコーヒーの魅力を広めたいという気持ちもわからなくはないが、長年に渡って培われた紅茶文化に割って入るには、ビジネスとしてはかなりリスキーだったはず。だが持ち前の性格からなのか、ここでもポジティブシンキング。
「確かに多くの人から『インドは紅茶文化だよ』とか『コーヒーにそんな高額は払わない』など、懐疑的な意見を多く言われました。でも私も妻もコーヒーが大好きで、私たちと同じようにコーヒーに興味を持っている人はきっとたくさんいるという自信があったのです」。
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