渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。
▶︎すべての画像を見る 最寄駅は清澄白河、門前仲町、木場。そのどの駅から歩いても、10分以上を要する。つまりここ「コーヒー マメヤ カケル」はわざわざ行きたくなる店、特別な場所だ。
代表兼バリスタの國友栄一さんに話を伺った。
國友 以前いらしていただきましたね。
渡辺 覚えていてもらえましたか。光栄です。友人に軽く「お茶でもしよっか」と誘ったら、ぜひ僕を連れて行きたい場所があると。「移動から店を出るまで最低2時間はかかりますけど」と言われ、これは面白そうだと何も聞かずついて来ました。で、衝撃。コーヒーをコースで楽しめるとは。
國友 ここではコーヒーを美食の一部と捉え、お客様に新しい体験をしていただきたいんです。1種類の豆を水出し、ドリップ、エスプレッソなど、ノンアルコールのモクテルも含めたフルコースでご提供します。
渡辺 僕はカフェインが苦手で、でもコーヒーの風味や香りは大好き。だから少しずつでしたが、不慣れなりに口の中で味を探していくのがすごく楽しくて。ゆっくりと最初から最後まで、知識がない自分でも、まるで旅行のような気持ちいい時間を体感しました。
國友 ありがとうございます。最初にオープンした表参道店を立ち上げたのは11年前。以前は虎ノ門ヒルズにも出店していました。でも、コースでお出しするのはここだけです。
渡辺 この店舗はなぜこちらに?
國友 店の広さや駅からの距離など、僕が探していた条件にここがぴったりで。お客様自身でも気付いていなかった欲求を満たせたり、スタッフもワクワクしながら働けると確信しました。
渡辺 周辺にはギャラリーや美術館もありますし、穴場というと失礼かもしれませんが静かないい場所ですよね。ここはいわゆるカフェというより、内装やスタッフさんの立ち居振る舞いを見ても上品でモダンなレストランのようです。でも、堅苦しさは感じない。
國友 僕たちのサービスは、コーヒーの味だけでなく空間や接客などすべてを統合したものです。口に入れるものを扱う場合は特に、店側とお客様のコミュニケーションが欠かせませんね。
渡辺 なるほど。すごく細部まで気持ちが行き届いていて、豆を最大限に楽しむことができると。ちなみに、“カケル”という店名の意味はなんですか?
國友 コーヒーとのさまざまな“掛け合わせ”を表現しました。実際、パティシエやバーテンダーなど外部のプロをお招きし、コラボレーションを行っています。また、もともと使っていたコーヒー マメヤのロゴを45度回転させると“×”の記号が現れるんです。
渡辺 さすが、すべてにおいて気が利いてますね。
——店を出て帰路につく。余韻につられ、静かな街を行く足取りは軽やかに。なるほど空前のコーヒー体験だ。