ネイチャー株式会社 創業者 塩出晴海
▶︎すべての写真を見る 早朝から決まったルーティンをこなし、休日はヨットに乗ったり、トライアスロンに参加するなど、とにかくアクティブな「ネイチャー」創業者の塩出晴海さん。
そんなエネルギッシュな塩出さんのFUN-TIMEとは。
きっかけは太平洋のど真ん中で感じたそよ風
「すみません、今はこちらの名刺しか持ち合わせがなく……」。あいさつの際、塩出はそう言いながら名刺を差し出した。
一見すると何てことはない普通の名刺だ。冒頭の言葉の意味を訊くと「お渡しした名刺の肩書は『代表取締役社長』になっていますが、切らしていたほうは『創業者』になっているんです。本来であればそちらをお渡ししたくて」。
大した違いがないように思い不思議がっていると、察したのか塩出が再び。
「弊社ではティール組織という、仲間同士といいますかフラットな関係で構成された組織を目指しているんです。そのほうが個々の能力を解放でき、組織として進化ができると思っているので『代表取締役社長』だとちょっと違うかなって。だから僕にとっては『創業者』のほうがしっくりくるんです」。
FUN-TIMEはヨットに乗って海に出ること。父親が始めたのを機に20歳の頃から乗っているという。
「行ったことのない島にヨットで上陸する瞬間が最も幸福度が高いです。オンシーズンなら気候が許す限り、ほぼ毎週海に出ています。
今年のゴールデンウィークに伊豆大島へ行ったのですが、風と潮流の影響を受けなかったことで、奇跡的に一日で到着することができました。いつかヨットで世界一周をするのが夢です」。
ゲームのプログラミングなど、好きなことに対しひとりで何でも独学で向き合っていた父親の影響で、10歳の頃から起業することを考えていたという。ネイチャー創業のきっかけは、父親とのオーバーナイトセイリングでのひととき。「不思議な瞬間でした」と、懐かしそうに当時のことを振り返る。
「ヨットで沖縄まで行ったのですが、360度海しか見えない、夕暮れが海面を真っ赤に染めた太平洋のど真ん中にいるときに、ひとりでデッキに出てセイル(帆)の調整をしていたら風がふわっと吹いてヨットがすうって動いたんです。その瞬間がめちゃくちゃ心地良くて、自分でも不思議なほど高揚感を覚えたんです。
そこで『この気持ちは何だろう』って考えたときに、人間は今でこそ服を着て、建物の中でコンピューターなどを使いながら暮らしているけれど、もとは自然の中に晒されてきた動物。であれば人間って本質的には自然の中にいたいと思う本能がDNAレベルであるのではないかなって思ったんです。
その経験から、自然と共生することをミッションに掲げてテクノロジーを使った仕事をしたいと思い、31歳で起業しました」。
とはいえ、どんなに自分がやりたいと思ってもビジネスである以上、ニーズがないことには実現できない。
「自然と掛け合わせた領域とは何かと考えたときに僕はクリーンテックだと思ったのですが、その中で大きな領域が電力なんです。近年は節電が広く叫ばれていますが、結局みんなが好きなときに好き放題に電気を使うと電力需給が逼迫するわけです。
でも、電力の需要をコントロールする仕組みをつくってピークを緩やかに抑えることができたら、そのシステム自体がバーチャルな発電所になって、必要な発電所の数も減らせます。
弊社では“ネイチャーリモ”という商品を作っているのですが、これは使用している家電を外出先からスマートフォンで操作できるリモコンで、帰宅時間に合わせてエアコンの温度設定ができます。
また最近はGoogle Homeなどのスマートスピーカーが普及していますが、スマート家電を持っていないと声で操作はできません。でもネイチャーリモなら赤外線のリモコン付きの機器であれば声で操作ができるんです。
将来的にはエアコンをインターネットにつないで電力需要の最適化をしたいという思いから作りました」。
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