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2022.06.07

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元Jリーガー、現在は大企業のCEO。すべてに100%で臨む嵜本晋輔さんのFUN-TIME

嵜本晋輔●1982年生まれ。大阪府出身。2001年にガンバ大阪に入団するも’03年のシーズン終了後に退団。その後、家族が経営していたリサイクルショップに本格的に参画。’11年に現会社の前身である株式会社SOUを設立。’18年3月に株式上場を果たす。現在は社会人サッカークラブ「南葛SC」の取締役を兼務。

バリュエンスグループ CEO 嵜本晋輔


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今注目の人に、人生を楽しむためのヒントを聞くインタビュー。ゲストはバリュエンスグループ CEO 嵜本晋輔さんだ。

元Jリーガーというユニークなキャリアを持ちつつ、現在では総従業員数800名以上の大企業に成長させた。

そんな優れたビジネスセンスを持つ嵜本さんのFUN-TIME事情とは?
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昨年から始めたサーフィンにハマっています

品川駅から程近いビルの28階。周辺には遮蔽物がなく、広々としたガラス張りのオフィスからは東京タワーとスカイツリーを一望することができる。

しばし絶景に酔いしれていると、「おはようございます」と言いながら奥のほうから小走りで向かってくる。

「嵜本です。今日はよろしくお願いします」。この日着ていたのはCFCL(シーエフシーエル)のネイビーのセットアップ。ニット製の繊細なギャザーデザインと滑らかなラインが際立っている。

「実はリサイクル素材でできていて、大切な日にだけ着る勝負服なのです」と照れ笑いを浮かべながら指先で袖のギャザーに触れつつ、「私の中の勝負服の定義は、着心地と作り手の想いがしっくりくるもの。

この服は着ていて気持ちがいいですし、何よりアパレルブランドとして初めてLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施し、環境負荷の可視化をいち早く実現させている点が素晴らしい。

私たちもサステナビリティを意識している企業としてこの服から学ぶことが多いのです」。

身に着けるものひとつをとっても仕事と関わりのあるものを選ぶ。それは服に限ったことではない。

「プライベートと仕事は切り離せず、むしろ24時間365日すべてがプライベートという感覚です。例えば仕事で難問にぶち当たった際、議論を重ねていくときに幸せを感じます。

ベストなアイデアを実行するわけですが、それでもことごとくうまくいかない。そういうことも含めて人生の醍醐味を実感しています。だから人生そのものが私のFUN-TIMEということになります」。

そう言い終えるやいなや「ただ、こうなると企画の趣旨と異なりますよね」と、こちらを気使い過去のオーシャンズをパラパラと眺めながら思案する。

「そうそう家族でキャンプに行きますが、友人に誘われて昨年から宮崎でサーフィンを始めました。

というのも羽田から宮崎空港まで90分弱で行けて、海までは空港から15分で着くので関東で車を使って行くよりも近く、なおかつ波にも多く乗れるのでコスパが高いんです」。

もちろんサーフィンも、仕事につながる貴重な時間。

「午前2時間、午後2時間の計4時間ほど波に乗っているのですが、その間はずっと水平線を見ながら波のことしか考えていません。

日常においては仕事のことを考えない時間がないので、海にいるときはデジタルデトックスではないですが自分と向き合える時間になるのです。

かなり体力を使うので終わったあとは思考ができない状態になり、そのおかげで逆に頭の中がクリアになるのもいいですね」。
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自分自身も含めてすべてのことに期待しない



サーフィンと同じく、貴重なFUN-TIMEが家族との時間。

「子供とじゃれ合っている時間は楽しいです。私が帰宅する頃には既に寝ているので、朝一緒に過ごす1時間は欠かせません。

出社前なのでバタバタしていますが、朝食は一緒に摂るようにしていて、そのときにいろんな会話をしています。子供から教えられることが多いです」。
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さらに子煩悩であると同時に愛妻家でもある。

「仕事に専念できるのは家庭を守ってくれる妻がいるからこそだと思うので、感謝や尊敬の気持ちは忘れずにいたいと思っています。

たまに奥さんの悪口を言うなど、家族を大事にしない人もいますが、あれはダサいと思うんです。これからの時代は仕事も家族も100%向き合うというのがあるべき父親像なのかなと思っています。

私はまだ全然ダメですが、仕事が忙しいから家族をないがしろにするというのはサステナブルではないですし、どちらも100%で向き合うということが私は正解だと思っています。

まあ嫁がどれだけ私に満足しているかはわかりませんが(笑)」。

子供や奥さまに対し深い愛情を注いでいるがそのベクトルは普段の仕事でも同じ。

それはサッカー選手としてのキャリアを終え、お父さまとご兄弟が経営されていたリサイクルショップの社員として働くことになってからずっと。

「父の影響ですが、とにかくご縁とご恩を大切にすることを意識してきました。その際“ギブアンドテイク”で言うところの“テイク”を意識した“ギブ”ではなく、何の下心もない“ギブ”をしまくる。

つまり無償の愛といいますか……見返りを求めないということです」。

感情的にならず口をついて出る言葉はすべて尊く、それは徳の高い僧侶の説法を聴いているかのような錯覚に陥りそうなほど。関西弁交じりの柔らかく耳障りのいい言葉と自然光に包まれながら話す姿が、神々しさに拍車をかける。

泥にまみれながら遮二無二ボールを追いかけてゴールを決めた瞬間、無意識にガッツポーズを決めていた人とは到底思えない。そう言うと苦笑交じりに答える。

「もちろん喜怒哀楽の感情はありますが、向き合う訓練をしています。その都度感情的になってしまうと正しい意思決定ができなくなるのです。

選手時代と同じ気持ちで全力投球はしているのですが、ガッツポーズは社会に出てからはしたことがないので、いつか心の中でガッツポーズをしたいです。

あとこの仕事を始めてから自分自身を含めて、すべてのことに期待しないということもあると思います。期待ってポジティブに使われていますが、人によっては、苦しめるキラーワードになることもありますから。

期待しようがしまいが、日々目の前で起こることすべてがとにかく楽しいんです」。

インタビューを終えて抱いた印象は、人としても経営者としても親としても夫としても、とにかく完璧。ただ人間というものは往々にして不完全であり、どこかに必ず人としての雑味や衝動があるはず。

席を立つ寸前に、「日常生活の中でわかってはいるけどやめられないことはありますか」とたずねた。すると「ごくたまに、スナック菓子を食べたりしますね。スコーンとか! あれ美味しいですよね(笑)」。

最後の最後に、今日一番の笑顔を拝むことができた。
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