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自分自身も含めてすべてのことに期待しない



サーフィンと同じく、貴重なFUN-TIMEが家族との時間。

「子供とじゃれ合っている時間は楽しいです。私が帰宅する頃には既に寝ているので、朝一緒に過ごす1時間は欠かせません。

出社前なのでバタバタしていますが、朝食は一緒に摂るようにしていて、そのときにいろんな会話をしています。子供から教えられることが多いです」。

さらに子煩悩であると同時に愛妻家でもある。

「仕事に専念できるのは家庭を守ってくれる妻がいるからこそだと思うので、感謝や尊敬の気持ちは忘れずにいたいと思っています。

たまに奥さんの悪口を言うなど、家族を大事にしない人もいますが、あれはダサいと思うんです。これからの時代は仕事も家族も100%向き合うというのがあるべき父親像なのかなと思っています。

私はまだ全然ダメですが、仕事が忙しいから家族をないがしろにするというのはサステナブルではないですし、どちらも100%で向き合うということが私は正解だと思っています。

まあ嫁がどれだけ私に満足しているかはわかりませんが(笑)」。

子供や奥さまに対し深い愛情を注いでいるがそのベクトルは普段の仕事でも同じ。

それはサッカー選手としてのキャリアを終え、お父さまとご兄弟が経営されていたリサイクルショップの社員として働くことになってからずっと。

「父の影響ですが、とにかくご縁とご恩を大切にすることを意識してきました。その際“ギブアンドテイク”で言うところの“テイク”を意識した“ギブ”ではなく、何の下心もない“ギブ”をしまくる。

つまり無償の愛といいますか……見返りを求めないということです」。

感情的にならず口をついて出る言葉はすべて尊く、それは徳の高い僧侶の説法を聴いているかのような錯覚に陥りそうなほど。関西弁交じりの柔らかく耳障りのいい言葉と自然光に包まれながら話す姿が、神々しさに拍車をかける。

泥にまみれながら遮二無二ボールを追いかけてゴールを決めた瞬間、無意識にガッツポーズを決めていた人とは到底思えない。そう言うと苦笑交じりに答える。

「もちろん喜怒哀楽の感情はありますが、向き合う訓練をしています。その都度感情的になってしまうと正しい意思決定ができなくなるのです。

選手時代と同じ気持ちで全力投球はしているのですが、ガッツポーズは社会に出てからはしたことがないので、いつか心の中でガッツポーズをしたいです。

あとこの仕事を始めてから自分自身を含めて、すべてのことに期待しないということもあると思います。期待ってポジティブに使われていますが、人によっては、苦しめるキラーワードになることもありますから。

期待しようがしまいが、日々目の前で起こることすべてがとにかく楽しいんです」。

インタビューを終えて抱いた印象は、人としても経営者としても親としても夫としても、とにかく完璧。ただ人間というものは往々にして不完全であり、どこかに必ず人としての雑味や衝動があるはず。

席を立つ寸前に、「日常生活の中でわかってはいるけどやめられないことはありますか」とたずねた。すると「ごくたまに、スナック菓子を食べたりしますね。スコーンとか! あれ美味しいですよね(笑)」。

最後の最後に、今日一番の笑顔を拝むことができた。


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