未知のコンビニ Vol.4
身近すぎる存在は、軽んじられる。コンビニなんて、その最たるモノ。「まさかこんなモノが潜んでいたなんて……」。いつもは見ない隣の棚を違う視点から眺めれば、そんな発見が数多ある。さて、知らないと損をする、コンビニの魅力を深掘りしていこう。
連載「未知のコンビニ」をはじめから読むぱかっと開ければ湯気がふわっ、肉はジューシーで野菜はシャキシャキ、たまごはとろ~り。そこらの定食屋より確かなクオリティであることも多い、コンビニ弁当。
「今日もコレか……」なんて侘しい思いをしていたのは、今は昔。常日頃から口にして当たり前になっているものの、とくにできたての状態を再現するチルド弁当の完成度は、みなさんも知るところ。そんな感動を実現しているのは、品質へのこだわりだ。コンビニ弁当を一層見直すかもしれない、製造の裏側をご覧あれ。
“保存性の向上”の副産物として生まれた、極上のチルド弁当
コンビニ記者の吉岡秀子さんが「クオリティが高い」と太鼓判を押すのは、セブン-イレブンのチルド弁当。丼ものを中心にラインナップされていて、ファンになっている人も多いだろう。
コンビニ弁当といえば、数年前までは、常温に近い温度での保存で温めなくても食べられるものが一般的だったが、いつの間にかチルド弁当が主流になっている。この弁当はどのように生まれたのだろうか。セブン&アイ・ホールディングス広報センターの戸田雄希さんに聞いた。
「最初は保存性を高めることを目指して、開発がスタートしました。その過程で低温保存を採用したことで、従来温度の保存では実現できなかった美味しさを追求することが可能になり、ふだんの食卓に並ぶような料理を提供したいという目標も、達成できました」(戸田さん・以下同)。
店頭に届いてから24時間足らずで消費期限を迎える常温保存の弁当と比べ、チルド弁当は冷蔵保存で2~3日程度、品質を維持することに成功。保存料を使わずに保存期間を延ばしたのだから、画期的な手法だったといえる。
常温ではすぐに傷んでしまう生野菜や半熟卵なども、チルド弁当なら使えるというメリットもある。さらに、加温しないと食べられないという特徴を逆手に取り、丼やカレーなど、熱々だからおいしい料理を弁当にすることが可能になり、ユーザーの選択肢を増やすことにもつながった。保存性を高めたら、美味しさまでついてきた。そんなウマい手法だったのである。
卵とじはひと鍋ずつ、牛肉は1枚ずつ……驚くほど丁寧な調理工程
そんな一挙両得のチルド弁当だが、その不動の人気を築いた理由は、妥協のない商品開発にあるという。「セブン-イレブンのチルド弁当は、電子レンジで調理するだけで本格的な味になるよう、日々試行錯誤しています」と戸田さん。
好評を博している弁当であっても、永遠にユーザーの好みやニーズに合致し続けるとは限らない。ユーザーの要望の変化に合わせて、リニューアルを重ねているのだ。
「刻一刻と変化していくお客様のニーズに対応し続けることが大事だと思うので、支持されている商品ほど、定期的にチェックしています。最近も『海老とホタテの特製中華丼』のリニューアルをしたばかり。人気の高い『特製ロースかつ丼』も、昨年リニューアルしました」。
さらに、味のクオリティを高めていくため、製造工程で独自のシステムを導入している。
「『特製ロースかつ丼』『特製親子丼』は、ご飯の上に乗せる具材を、一食分ずつ鍋で調理しています。ひと鍋分にわけて調理することで、高温をかけて短時間で作ることができます。高温で一気に仕上げると、具材に味が染み込みやすく、卵もなめらかな食感になるのです」。
「特製牛丼」も、牛丼専用の設備で調理されている。アンガス種の牛肉を1枚1枚調理することで、ふんわりとした食感を実現しているそう。
コンビニ弁当というと、セントラルキッチンで大量に作られたものを、小分けにしているイメージがあるが、高クオリティを実現するため、手間ひまをかけて丁寧に作られている。開発の段階で何度も試作を重ね、辿りついた調理工程だ。
研究を重ねてきた調理法を知ったうえで、特製ロースかつ丼を食してみた。肉厚なのに柔らかなとんかつに、なめらかな半熟の卵。レンジで温めたとは思えないクオリティに、改めて驚かされる。ほどよい味付けでふんわりとダシが香るところが、これまでのコンビニ弁当の“濃い味”というイメージをくつがえす。
また、ご飯と具材が別々に盛り付けられ、温めてから具材を乗せるため、ご飯がベチャベチャにならないところも、セブン-イレブンのチルド弁当の魅力だろう。
世の中の変化を受けて、日に日に進化しているコンビニ弁当。材料や容器を厳選し、より美味しいモノを目指した末に完成したチルド弁当は、値段以上の価値がある。
そろそろ舌が欲し始めたのでは? さあ、外食に引けをとらない、コンビニ飯で美味しい食卓を囲もうじゃありませんか。
【取材協力】
セブン-イレブン
http://www.sej.co.jp/取材・文=有竹 亮介(verb)