37.5歳からの愉悦 Vol.127
2020.01.09
FOOD&DRINK

下北沢の梅干しサワー専門店で、看板娘が勧める梅酒が絶品だった

看板娘という名の愉悦 Vol.99
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

焼酎を炭酸水で割ったチューハイ。これに梅干しを加えると梅干しサワーになる。

根強いファンが多いお酒だが、昨年4月、この梅干しサワーに特化したスタンドバーがオープンした。場所は下北沢、店名はそのまま「梅干しサワー専門店」。

駅前
再開発により「南口」はなくなったが、こちらの風景は以前のまま。

駅から徒歩1分で到着。

外観
年中無休、毎日16時から営業している。
内観
店内には看板娘の姿が。

基本のメニューは4種類の梅干しと3種類の焼酎のマッチング。

メニュー
梅干しは「甘い」「しょっぱい」「バランス型」「出汁」という布陣。
メニュー
このような選別基準もある。
掛け軸
掛け軸はもちろん「梅に鶯」。

看板娘のおすすめは、鰹出汁が効いた千紅梅と芋焼酎の組み合わせ。それをいただきましょう。

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看板娘、登場

看板娘
「お待たせしました〜」。

こちらは佳織さん(19歳)。神奈川県厚木市生まれで、現在は都内の大学に通っている。BGMはOfficial髭男dism。佳織さんがカウンターに入る日は、これしかかけない。ちなみに、一番好きな曲は『115万キロのフィルム』とのこと。

梅酒
茶室のような装い。
梅入り
厳かに梅干しを入れて……。
梅酒
丁寧に潰して静かにかき混ぜる。

美味い。明治から続く和歌山県の梅干しメーカー「まるたけ」が作る高級梅干しと芋焼酎がやさしく絡み合う。

この店は梅干しサワー好きのオーナーが究極の一杯を追求するために出店したという。

他店
オーナーは歌舞伎町でゆずファンが集うバーも経営。
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さて、佳織さんの実家は花屋だ。

「子供の頃は落ちている花びらを拾って妹と色水を作ったり、切り刻んで『はい、料理ができました』なんて言いながら遊んでいました」。

ウェブ
こちらが店のウェブサイト。

しかし、店は多忙のため、夏休みや冬休みになると北海道にある母方の実家に預けられた。

「札幌の北東部にある砂川という町で、おじいちゃんとおばあちゃんが毎日のように車で連れていってくれたんです。近くに『北海道子どもの国』っていう公園があって、そこの池の鯉にエサをあげるのが好きでした」。

おじいちゃん
水泳も教えてくれたおじいちゃん。

高校時代は吹奏楽部でホルンを担当。始発で朝練に向かい、部活が終わると20時から塾で勉強、終電近くで帰宅するという生活だった。

「当時は普通の高校生みたいに遊びたいと思っていましたが、いま振り返ると楽しかった記憶しかないです。2年生のときは東関東大会で金賞、3年生で銀賞を獲れました」。

定期演奏会
高校最後の定期演奏会の様子。

卒業後も部活動は続けた。

「1、2年生が授業をしている時間帯は学校に入れないので、近くの地区センターで打ち合わせをするんです。そこが開くまでは公園で時間を潰していました」。

公園
誰が一番長くぶら下がれるか大会(紫の上着が佳織さん)。

高校卒業後は、「音楽は趣味にしておきたい」という理由で音大ではなく一般の大学に進学した。アルバイトはこのお店のほか、銭湯チェーン「おふろの王様」でも行っている。

「一緒に働いているおばあちゃんに料理を教えてもらいました。玉子焼きに湿気ったポテトチップスを混ぜると美味しいわよ、とかそういうレベルですけど」。

なお、この日はプレミアムフライデーで15時に仕事が終わったという男性客がいた。「この子のいいところ? 笑顔ですかね。あと、性格が真面目」。

お客さん
プレミアムフライデーにプレミアムモルツを飲んでいた。
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梅干しサワーの奥深さを満喫したところで、お代わりをいただこう。

「梅干しサワーではありませんが、山形の小嶋総本店が造っている『東光 吟醸梅酒』もおすすめですよ」。

梅酒
国内の主要な梅酒大会で三冠を達成した銘柄。

本来は日本酒の蔵元だが、余った酒粕に梅干しを漬けて趣味で梅酒を造っていたところ、口コミで評判が広まり、市販用として本格的に乗り出したそうだ。

梅酒
「どうぞ〜」。

正直に言うと梅酒はあまり好きではないが、これはすごかった。今までに飲んだどんな梅酒とも違う芳醇な果実感がある。

「私、現実主義でマイナス思考なんですが、ここで働くようになって世界が広がったんです。いろんな人の話を聞くうちに人生でやりたいことも増えました」。

ここで、焦った様子の男性が店に入ってきて「昨日、カバンの忘れ物ってなかったですか?」と言った。佳織さん、すぐにバックヤードを探す。

カバン
「あ、ありました!」。

他人事ながらホッとしたところでお会計を。読者へのメッセージもお願いします。

メッセージ
梅娘のお湯割り、次回いただきましょう。

【取材協力】
梅干しサワー専門店
住所:東京都世田谷区北沢2-12-10
電話:03-5787-5929
https://twitter.com/ume_sour_senmon

 

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石原たきび=取材・文

# 下北沢# 梅干しサワー専門店# 看板娘
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