車のトリセツ Vol.20
2020.12.15
CAR

メルセデス「AMG」のスゴさの本質を知ってる? “憧れの記号”の歴史を追いかける

「車のトリセツ」とは……

AMGの三文字の由来

「メルセデス AMG」は、メルセデス・ベンツのなかでも、ハイパフォーマンスモデルのみが冠することができるブランド。その歴史は1960年代に遡る。

「AMG」はハンス・ヴェルナー・アウフレヒトとハルト・メルヒャーという2人のエンジニアの頭文字、アウフレヒトのAと、メルヒャーのMから取られている。最後のGは、アウフレヒトが育ったドイツ南部の小さな町、グローザスバッハを表す。

スパ・フランコルシャン24時間レースで優勝した「AMG Mercedes 300 SEL 6.8」

2人はもともと、ダイムラー・ベンツの開発部門でレース用エンジンの開発に取り組んでいた。

しかし、1955年を最後にダイムラー・ベンツはモータースポーツから撤退。仕方なくふたりは手弁当でエンジン開発の技術を磨いていく。

1965年、彼らの同僚がそのエンジンを積んだ「300SE」でドイツツーリングカー選手権に出場し、10回の勝利を収める。評価を上げた彼らはダイムラー・ベンツを退社し、1967年にAMGを立ち上げた。

最初の大きなターニングポイントは、1971年のスパ・フランコルシャン24時間レースだ。AMGがチューニングしたマシン「AMG Mercedes 300 SEL 6.8」が、アルファロメオやフォードを相手にクラス優勝。総合でも2位を獲得した。

この車は、大型の4ドアセダンだ。それが軽量のスーパースポーツを組み伏せた。世界にAMGの実力を知らしめた瞬間だった。

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世界が絶賛するエンジン作りのプロとして

1970年代に入ってもAMGは、多くのレースに出場するメルセデス・ベンツのマシンにエンジンを供給。その一方で、市販されているメルセデス・ベンツ車のチューニングも手掛けるようになった。

1984年には、4バルブシリンダーヘッドを搭載したエンジンを開発し、名実ともにエンジンメーカーへと進化。その2年後、当時のメルセデス・ベンツが持つ最大の5.6L V8エンジンに4バルブシリンダーヘッドを独自に取り付け、W124型のEクラスに搭載。

1986年に「AMG 300 E 5.6」が最高速度303km/hを記録し、アメリカで「The Hammer」というあだ名を付けられ大絶賛された。

ちなみに、バブル絶頂期の1989年には三菱自動車からAMGエンジンを搭載した『ギャランAMG』が発売されたこともある。

まるで鉄の塊が突っ走るという意味から「The Hammer」と呼ばれた「AMG 300 E5.6」。(写真は「300 E6.0」)

1980年代には、半ば公式にメルセデス・ベンツへの部品供給が始まったAMG。1990年にダイムラー・ベンツ AGと協力協定を締結。メルセデス・ベンツの直営店や特約販売店でもAMGモデルが入手できるようになる。

1993年には初の共同開発車「Mercedes-Benz C 36 AMG」が発売された。1999年には、当時のダイムラー・クライスラー AGが株式を100%取得。

これにより、各グレードに独自のエアロパーツやホイールを備えたり、エンジンチューンが成されたりした「AMGモデル」が設定されることになる。

AMGのこだわりは、もちろんエンジンだ。哲学である“One man one engine”、つまり、厳格な品質基準に従い、ひとりのマイスターが一基のエンジンを最初から最後まで責任を持って手作業で組み上げる手法が継承されている。

エンジンにはマイスターのサインとAMGを象徴するエンブレムが刻印されたプレートが設置されている。このエンブレムの左側に記された「リンゴの木と小川」は古いドイツ語で、「アファルター=りんごの木」、「バッハ=小川」。AMGが長らく本社を構えた町「アファルターバッハ」を意味している。

AMGが手掛けたエンジンにはこのようにエンジニアのサインと、AMGを象徴するエンブレムが刻印されている
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メルセデスをスポーティに進化させた価値

2014年には、メルセデス・ベンツにおける「究極のハイパフォーマンスを追求するブランド」として「メルセデスAMG」が新たに設立された。

そこで大きな注目を集めたのが、ベース車両が存在しない完全独自開発されたスーパースポーツ、「メルセデスAMG GT」の発表である。この車は、2009年にAMGが初めて完全独自開発した「SLS AMG」の後継にあたる。

AMGが初めて独自に開発した「SLS AMG」(写真はクーペ)。

メルセデス・ベンツのスポーツグレードとして各モデルに設定される「AMG」と独自開発のハイパフォーマンスモデル。この二本柱により、AMGモデルの販売は好調で、2019年のメルセデスAMGの世界新車販売台数は13万2136台と、前年比11.8%増と2桁増を達成している。日本でも、2019年、過去最高となる8000台を超えたという。

メルセデス・ベンツの販売が堅調な一因には、スポーティなイメージ進化させたAMGの躍進がある。これからも、すべての男が胸躍るようなハイパフォーマンスモデルを見せてくれることだろう。

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[主な現行車種]

・メルセデスAMG GT クーペ

AMGが独自に開発したスーパースポーツカー。エクステリアには、伝説の300 SLレースカーをモチーフとした、垂直ルーバーをもつグリルが採用されている。

心臓部は4.0L V型8気筒直噴ツインターボエンジンで、最高出力は530psを発揮する。クーペのほかロードスターモデルもある。

 

・G63

Gクラス、いわゆる“ゲレンデ”の最高峰。4L V8ツインターボエンジンの最大出力は585ps、最大トルクは850Nmを発揮する。

足回りにはAMG RIDE CONTROLスポーツサスペンションを搭載。電子制御ダンピングシステムにより、レスポンスと正確性が際立つハンドリングを実現した。

 

・GLE 53 4マチック+クーペ

ベースは全長約5mのSUV、GLEのクーペスタイルモデル。3Lターボエンジンにモーター兼発電機のISGが組み合わされ、最高出力435psを発揮する。

メルセデスAMGが独自開発したAMG ACTIVE RIDE CONTROLと呼ばれる足回りは、電子制御により最大1秒間に1000回も路面と走行状況を分析し、しなやかな乗り心地と俊敏なボディコントロールを両立させている。

 

・GLC 43 4マチック

ミドルクラスSUVのGLCに、大型化されたツインターボチャージャーを備えた3.0L V型6気筒直噴ツインターボを搭載。

最高出力は390ps、最大トルクは520N・m。足回りはメルセデスAMGが開発したAMG RIDE CONTROL+エアサスペンションのシステムが備わる。ほかに476psを発揮する4L V8ツインターボの63 S 4マチック+もある。

 

・A35 4MATIC

メルセデス・ベンツで最もコンパクトなAクラスがベース。低回転からの素早いレスポンスと高回転までスムーズに吹け上がる2.0Lターボエンジンは、306psの最大出力を発揮。

AMGパフォーマンス4MATICの足回りが、コンパクトながら本格的な走りが楽しませてくれる。他に421psを発揮する2Lターボの45 S 4マチック+もある。

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走行に関するトリセツはダッシュボードの中にあるけれど、各メーカーの車の魅力を紐解くトリセツはなかなか見つからない。だから始める、オートマティックで好きになったあの車を深掘り、好きな理由を探るマニュアル的連載。上に戻る

 
林田孝司=文

# メルセデス AMG# メルセデス・ベンツ#
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