▶︎すべての写真を見る今、SNSで「
シャクティマット」なるものが話題となっているのをご存知だろうか。剣⼭のような突起がびっしりと並んだマットに寝転がるだけというシンプルな健康アイテムだが、美容や健康意識の⾼い有名⼈が、⾃発的にSNSでアップしたこともあり、最近にわかに注⽬を浴びているのだ。
経験者の感想は「とにかく痛い」「2度とできないと思った」「なのにクセになる」と、わかるようでわからない。だが、それでも⼈気は加熱する⼀⽅で、注文から到着まで数週間待ちもザラだという。
なぜ痛いものに⼈は⾝を委ねるのか。その真相を確かめるべく、実際にシャクティマットを体験してみた。
ルーツは「針のベッドに横たわる修⾏法」
「究極のシャクティセット」2万5500円/シャクティ(シャクティ ジャパン support@shaktimat.co.jp)
シャクティマットのルーツは、古代インドに伝わる「針のベッドに横たわる修⾏法」にある。
ヨガや瞑想では、痛みや恐怖と向き合い、⾝体感覚や意識を研ぎ澄ますために⾏われてきたという。現在のシャクティマットは、その修⾏法を現代向けに再解釈し、⽇常⽣活でも取り⼊れやすい形にしたもので、スウェーデンの僧侶によって考案された。
「何かに挑戦するときは痛みが伴うこともありますよね。ヨガ哲学では、嫌悪感や恐怖感を乗り越えた先に、⾒たことのない世界が⾒えるという考え⽅があります。つまり“拷問から究極の癒しを得られる”のがシャクティマットなんです」。
そう語るのは、⽇本の広報を務める⼩熊由香さんだ。

早速、実物を⾒せてもらった。写真ではスパイクの突起部分に多少の弾⼒がありそうに⾒えていたが、実際に触れてみると、ものすごく硬い。怪我をしそうなほど鋭利で、体重をかけずとも、すでに痛い。
「レゴブロックと同じABS樹脂を使⽤しています。耐久性も抜群なので、⻑く愛⽤していただけますよ!」と解説してくれるのだが、理屈よりも先に体が反応する。⼿のひらを置いただけで、条件反射的に引っ込めたくなるほどの刺激があるのだ。
薄⼿のインナーを着た状態で試しに横になってみた。するとトゲトゲとした感触はあるものの、意外にも、想像していたほどの痛みはない。
「痛みに強いですね! これなら全然、イケると思います!」と、⼩熊さんにおだてられ、こちらも「そうですか?」なんて気を良くしつつ、1週間の貸し出しをお願いした。だが、このときはまだ、シャクティマットの真価をまったく理解していなかったのだと、すぐに思い知ることになる。
「痛い」から「癒し」に変わるまで。1週間体験!

シャクティマットは基本的に素肌で使うことを推奨されている。ということで、⾵呂上がりに上半⾝裸になって、改めてマットの上に横たわった。
「痛い、痛い、痛い!!!!!!」
先ほど感じたトゲトゲ感とは⽐較にならない痛みが背中を襲う。⼩熊さんは「指圧」と⾔っていたが、そんな⽣やさしいものではない。鋭利な突起が背中⼀⾯に突き刺さっている感覚。“拷問”という⾔葉は決して誇張ではなかった。
1分も耐えられず、息切れをしながらマットから転げ降りる。しかも厄介なのは、降りる瞬間。寝ているときは体重が分散されているが、起き上がる際には⼀部に体重が集中する。そのぶん、突起がさらに深くめり込み、それが剥がれるときにも痛みが伴い、思わず声が漏れる。
ちなみにシャクティマットには、初⼼者向けの「ライト」、バランス型の「オリジナル」、上級者向けの「アドバンス」の3種類がラインアップしている。意外なことに、レベルが上がるほどスパイクの数が減るのだが、これは数が少ないほど1点にかかる体重が増えるため、刺激がより深くなるからだという。

「ライトは表⾯的にほぐすイメージです。アドバンスは深層まで針が届くので、アスリートや体を鍛えている⽅に向いています」と⼩熊さん。
この痛み、果たして耐えられるのか。とはいえ、このままではレポートにならない。そこでまずは先ほどと同じ薄⼿のインナーを着た状態で使うことにした。それだけで痛みは驚くほど緩和され、「これなら続けられる」というレベルまで下がる。
まずは数⽇間、この状態で⾝体を慣らし、満を持して再び素肌で挑戦……が、数⽇で慣れるような⽢いものではなかった。インナーを着ていたときとは⽐較にならない痛さなのだ。

推奨されている使⽤時間は約20分。そんなに耐えられる⾃信がなく、まずは10分からとスマホでタイマーをセットし、再び横になる。突起が背中にグイグイと⾷い込み、あまりの痛さに⾝体は硬直状態。
スマホを⾒る余裕も、本を⾒る余裕もない。痛みを少しでも紛らわそうと、⽬を閉じ、深呼吸を繰り返し、ひたすら時間が過ぎるのを待つ。
だが、突起の存在感はやはり凄まじく、どうしても痛みのある部分に意識が向いてしまう。「仕事だ、我慢だ!」とひたすら⾃分を⿎舞する。
ところが、3分ほど経ったあたりから、感覚に変化が出てきた。痛みが消えるわけではないのだが、⾷い込んでいるというよりも、無数の点で⾝体を⽀えられているような感覚になってくるのだ。さっきまで反射的に⼊っていた背中の⼒も徐々に抜け、マットに⾝体を預けられるようになってきた。

「これは2つの理由があると⾔われています。1つは痛みに対して⾝体を守ろうと脳が1度拒否をするのですが、時間が経って危険性がない、受け⼊れても⼤丈夫と脳が判断すると痛みがおさまっていくと⾔われています。
もう1つは刺激を与えることで、痛みを鎮痛するホルモンやリラックス効果のあるホルモン、睡眠を誘導するホルモンが出てくると⾔われています」。
アラームが鳴るころには、ふわ〜っとした気分になり、これならいけそうだと、さらに10分延⻑。気づけばウトウトしていて、あっという間に20分が終了していた。ただし、マットから降りるときはやはり痛みを伴う。一カ所に体重が偏らないよう、そ〜っと降りるのがポイントだ。

季節は真冬。暖房が効いているとはいえ、裸で20分も横になっていれば普通は寒くてたまらなくなる。ところが不思議なことに、マットと接していた背中だけは冷えを感じない。鏡で⾒てみると、背中は⼀⾯⽳の跡がくっきり! ところどころ⾚くなっている部分もある。
これを「シャクティスキン」と呼ぶそうで、耐えた証のような妙な達成感も味わえた。

朝スッキリ、凝り軽減、痛みの先にある達成感
気になる効果についてだが、「SNSでは寝⼊りが良くなった」「夜中に⽬が覚めなくなった」など、快眠効果を実感している⼈が多い。
もともと寝つきは抜群に良いタイプなので、劇的な変化はわかりにくかったが、布団に⼊ってから体が温まるまでの時間は短くなった気がした。⼤きく違いを感じたのは翌朝の⽬覚め。いつもよりスッキリと覚醒する実感があった。
「究極のシャクティセット プレミアム」3万7000円/シャクティ(シャクティジャパン support@shaktimat.co.jp)
肩凝り解消にもなるのではと思っていたが、重度の肩凝りがほぐれるまでには改善しなかった。だが凝っているポイントにスパイクを当てると、スッキリと軽くなる実感があり、続けていけば改善されそうな期待感がある。
最近は⼈気が⾼まる⼀⽅で、模倣品も増えているが、突起の硬さや形状は全く別モノで、中には全然痛くないものもあるという。シャクティマットの本質は、あの痛みを超えた先にある感覚だ。だからこそ、突起の硬さや形状が重要なのだと、⼩熊さんは話す。

始めて数⽇は、あの痛みをまた体験するのかと思うと尻込みをするが、続けるうちに痛みは徐々に和らぎ、それでいて体の軽さも実感することができ、今ではすっかりその痛みにハマっている⾃分がいた。
朝乗れば、すっきりと体がリセットされ、昼はデスクワークの椅⼦に敷いたり、⾜元に置いたり、夜は⾵呂上がりに寝っ転がってリラックス、と1⽇中⼿放せないほどだ。
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拷問の先にやってくる癒しの時間。この感覚はほかでは味わえない。興味があるなら、ぜひ⼀度試してみる価値がある。