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仕事のプレッシャーや将来への不安が絶えないミドル世代。多忙な日々の中で、心の平穏を保ち、集中力を維持する力は“必須スキル”となりつつある。その解決策として、昨今注目されているのが「マインドフルネス」だ。
とはいえ、修行僧のような特別な時間が必要だと思い込み、尻込みしている人も多いのではないだろうか。
しかしその答えは、身近な場所……日常の「家事」のなかにあった。
じつは筆者の夫(40代半ば)はこの頃、お風呂掃除を率先して引き受けてくれるようになった。理由を尋ねると、「浴槽や壁をブラシでゴシゴシこすっているうちに、無心になって、心も体もスッキリする」とのこと。……ん?これって、まさかマインドフルネスの状態?
そこで、そんな素朴な疑問をきっかけに、企業での人材育成に豊富な経験を持つ今蔵ゆかりさんに、「家事×マインドフルネス」という意外な組み合わせについて聞いてみた。
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今蔵ゆかりさん⚫︎コミュニケーションクリエイター。マインドフルネス関連の資格を持ち、企業や医療機関向けに「経営者と社員、スタッフが共に成長できる職場づくり」をテーマにした研修・講演を実施。著書に『~自分も幸せまわりも幸せ~「上機嫌に働く67のコツ」』(ぱる出版)、『みんなに必要とされている人の「ひと工夫の習慣」』(クロス・メディア・パブリッシング)など。
脳が“今ここ”に戻るだけで、心は軽くなる。マインドフルネスは「頭の筋トレ」
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ーーそもそもマインドフルネスとは何か。その定義を改めて教えてください。いろいろな表現がありますが、一番シンプルに言えば「今、この瞬間に意識を向けること」です。
たとえば、こうして対話をしている最中に「お腹すいたな」「このあと会議どうしよう」と考えていると、それはマインドフルネスではありません。
今は「マインドフルネスとは?」という問いに意識を集中させる。それだけでOKなんです。特別なことじゃなく、“今ここ”に心を置くことが本質です。
ーー「今」に意識を集中させることで、どんな良い影響があるのでしょうか?人の脳は、過去の後悔や未来の不安に意識が飛びやすい構造になっています。たとえば、イライラやクヨクヨの原因も、多くは“今”起きていることではなく、「まだ起きていないこと」や「すでに終わったこと」なんです。
そんな意識の離脱に気づいて、「あ、違う違う。今、今」と戻していく。それがマインドフルネスの基本です。
一瞬でも“今”に戻ることで、見えないストレスから少し距離を取ることができるんです。
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ーーなんとなく「サザエさん症候群」に近いものを感じます。楽しく見ればいいのに、月曜のことを考えて憂うつになるあの感じ……。まさにそれです。まだ起きてもいない未来に、勝手に気分が落ちてしまう。それってもったいないですよね。どうせ月曜の朝は来るんだから、その時に考えればいい。
“今この瞬間”は、サザエさんを見て笑っていていい。そういう意識の持ち方が、マインドフルネスなんです。
ーーなるほど。思考が逸れてしまったときは、どう対処すればいいのでしょう?「また考え事してる。自分ってダメだな」なんてジャッジする必要はありません。大事なのは、「気づいて、戻る」訓練を積み重ねることです。
続けるうちに、思考が過去や未来に逸れる回数が減ったり、戻ってくるまでの時間が短くなったりします。この「気づいて戻る」の繰り返しが、考えグセを整える、いわば心のトレーニングなんです。
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