「褒める5:叱る1」が理想? 成長を後押しする黄金バランスとは
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――ちなみに、部下を指導するうえで、アメと鞭のバランスに悩む管理職も多いと思います。厳しく指導することが正しいと考え、「叱る」方が多くなってしまう人もいるのでは?叱ること自体が完全に否定されるものではありません。ただ、「効率的ではない」というのが私の考えです。
叱ることは短期的には行動を修正する効果がありますが、中長期的に見ると弊害も大きいんです。たとえば、内発的モチベーションが下がる、失敗を隠すリスクがある、不安や恐怖から積極性が失われる……など、組織にとってネガティブな副作用が起きやすい。
――「叱る」ことが、長い目で見ると「リスク」になってしまう可能性もあると。はい。だからこそ、ネガティブ・フィードバックは、できるだけ感情を切り離し、「情報提供」として伝える姿勢が重要です。ここで怒りや苛立ちの感情が乗ってしまうと、それは叱るではなく「怒る」「キレる」でしかありません。
――なるほど。伝える内容が同じでも、感情の有無で伝わり方はまったく違いますよね。おっしゃるとおりです。ちなみに、ある研究では、効果的な比率の目安として「褒めの黄金比」が提唱されています。それは「褒め」と「改善の指摘」の理想的なバランスを示す『5:1の法則』です。
これは、称賛が多ければ多いほど良いという単純な話ではありません。改善点がまったく指摘されない関係もまた、現実から目を背けさせ、本人の成長機会を奪ってしまう危険性があることにも言及しています。肯定的な関係性を保ちつつ、必要な時には軌道修正もする。重要なのは、この両者のバランスなんです。
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褒め方ひとつで、組織の空気もチームの成果も大きく変わる。そんな確信を持てた人も多いのではないだろうか。ただし、褒める相手は部下に限らない。上司、取引先、そしてときには初対面の相手に対しても……。
では、それぞれの立場・場面に応じて、どんな褒め言葉が響くのか? 後編では、「相手別・シーン別に使える褒めフレーズ実践マニュアル」をお届けする。人との関係性を育てる「褒めの一言」を、あなたも手に入れてみてほしい。