連載:俺のクルマと、アイツのクルマ男にとって車は名刺代わり。だから、いい車に乗っている人に男は憧れる。じゃあ“いい車”のいいって何だ? その実態を探るため「俺よりセンスいいよ、アイツ」という車好きを数珠つなぎに紹介してもらう企画。
【写真13点】「『ハイラックス』をセルフカスタム! 米国タコマに似せた、プロウィンドサーファーの愛車を拝見!」の詳細写真をチェック■62人目
白方優吏(29歳)

1996年生まれ、神奈川県茅ヶ崎市出身。プロウィンドサーファー。2013年の「オールジャパン ウェイブ クラシック」初級クラスでの優勝をきっかけに頭角を現す。2017年に、そのスペシャルクラスで3位の入賞を経て、同年「PWA ワールド ウィンドサーフィン ツアー」に参戦。2019年の「ウインドサーフィン全日本選手権」で優勝を果たし、プロに転向。地域の子どもたちとアート制作を行うなど社会活動にも積極的に参加している。Instagram@s_yushi31
トヨタ「ハイラックス」

全長5340×全幅1855×全高1800mm。高い耐久性と走破性を誇る、海外でも人気のピックアップトラック。力強い直列4気筒2.4Lディーゼルターボエンジンと四輪駆動システムを搭載し、悪路から都市走行まで幅広いシーンに馴染む。積載性に優れた荷台と快適なキャビンを備え、アウトドアからハードな現場、日常移動にも使える万能さが魅力。
車体は大きいけど、意外に小回りは効く!

海と生きる人たちが放つ特有のグッドバイブス。プロウィンドサーファーの白方優吏さんも例外ではなく、眩しいほどさわやかな笑顔で現れた。愛車であるトヨタ「ハイラックス」の白いボディも、気のせいか一段と輝いて見える。
「洗車が趣味ってくらいきれいに保つタイプです。でも、今日は汚い方ですね。小学生に有機農法を教えるキャンプに参加したり、伊豆のサーフトリップに行ってきたばかりで、車体はドロドロでした。この間の大雨に運良く洗ってもらった感じです(笑)」。

白方さんがハイラックスに乗り始めたのは約2年前。大きい割に小回りが効くことが、最初のうれしい発見だったという。
「初めてハンドルを握ったとき、これだなとピンとくるものがありました。車高が高い分、視野が広い。ボンネットが少し前下がりなので、フロントガラスからの見通しがいいんです。
それに、ミラーもやや大きめで死角を作りずらく、バックモニターもついてるので安心です。4WDなので、友人と雪山に行くときにも重宝しています」。
憧れはハワイの街を駆け抜けるピックアップトラック

以前は2000年製の「ダットサントラック」が愛車だった白方さん。ハイラックスと同じピックアップタイプだが、開放的な荷台に憧れがあるのは幼少期からの話。
「小さい頃からハワイに行く機会があって、現地のサーファーがトラックの荷台にボードを積んで走る姿をよく見てたんです。それが本当にかっこよくて……。荷台に腰掛けている光景も、いかにもハワイらしくて好きですね。日本では違法なので真似できませんが。
以前乗っていたダットサンも古いピックアップで、故障と修理を繰り返しながら大事に乗っていました。いよいよパーツが手に入らない!となったタイミングで、このハイラックスといいご縁があり、乗り換えたんです」。

新古車のハイラックスの値段は約500万円。当時の27歳にとってハードルの高い買い物だったが、一大決心した理由は憧れ以外にもあったと話す。
「ハイラックスに限らず、トラックって構造が単純なんで壊れにくいんですよ。中東に行くと、走行距離が30万kmを超えているのもざらにあります。とにかく耐久性がすごい。
それに、日本は自然災害が多いじゃないですか。ハイラックスならヘッドライトまでの高さなら水のなかでも走れるし、荷台にたくさん荷物も積める。緊急時も安心だなって。
7年のフルローンで買ったので、払い終えるのは34歳のとき。一生乗る気合いで購入しました」。
米国トヨタのタコマに似せたフロントグリル

いちばん気に入っているところは?と聞くと、カスタムしたフロントグリルだと即答。正規ロゴは3つの楕円を組み合わせた、お馴染みのトヨタロゴだが、白方さんはアルファベットが横に並ぶレトロなタイプを選んだ。パーツを自分で購入し、取り付けたのだとか。
「このフロントグリルがお気に入りです。実は米国トヨタのタコマに顔を似せたんですよ。ダットサンもハイラックスも大好きですけど、本当はタコマがいちばん好きで……(笑)。
日本でタコマを手に入れるなら並行輸入しかない。そうすると値段が倍になるんで、カスタムで工夫しながら、タコマに寄せています」。
ロゴは旧式の「TOYOTA」で、グリル周りはマットブラックに塗装。カスタムの作業はまだ道半ばだという。
道具さえあれば、ある程度のカスタムはセルフでこなせるという白方さん。いくら車好きでも、さすがに自分の手で改造する人は多くないが、実は車の修理や整備が家業だと聞いて納得。
「父はヨットで航海するような超アドベンチャーな人間なんですけど、車屋の経営もしているんです。父の仕事関係の知人とも知り合っていくうちに、車の手入れに興味を持つようになりました」。

ウィンドサーファーの選手として活躍する傍ら、昔から家業を手伝ってきた。話を聞けば聞くほど、車を見る目は職人のそれに近いことがよくわかる。
「18歳で運転免許を取ってから、お客さんの車を洗車したり、輸送したり、車検を取りに行ったり、父の手伝いをやってきました。オフシーズンなら、今でも手伝います。スポーツカーやトラック、セダンやワゴンなど、人より多くの車を運転してきた経験があるんですよ。
それに、どのパーツが故障したらどんな音がするのか、乗り心地がどう変わるのか。異変や異音を繊細に感じろ、センサーもすべて確認しろって、結構厳しく叩き込まれてきたんです。
ウィンドサーフィンのギアを扱うときなんかも、父の教えはすごく役に立ってると思いますね」。
タイヤはオフロード性能の高い「BFグッドリッチ」

フロントグリルの他はオーバーフェンダーを後付けし、タイヤもこだわりのものに付け替えたという。
「タイヤはゴツゴツ感のある『BFグッドリッチ』のものにしました。この王道のフォントも格好いいですよね。純正のタイヤより車高が数センチ上がっています。3センチを超えると構造変更の手続きをしなきゃいけないので、規定の範囲内でカスタムしながら、自分の理想に近づけてる感じです。
このタイヤは溝が多いんですよ。だから、僕みたいにロードノイズを感じる人もいるんじゃないかと思います。でも、純正と比べると乗り味が柔らかくなって、フカフカしてますよ」。

購入時の走行距離は1万2000km、そこから現在は3万kmを超えるほど運転してきたという。ウィンドサーフィンの大会が増えるハイシーズンは、特にロングドライブになることが多いそうだ。
「大会のハイシーズンになる12月から3月は、ほぼ毎日のように静岡県の御前崎や伊豆を往復しています。クルーズコントロールがあるので高速の長距離運転は特に楽ですね。
でもやっぱりSUVよりは、トラックの乗り心地は若干劣るかな? 僕の場合はタイヤを替えたので、快適さはかなり増してると思いますが」。
スマホのアプリで、風や波の状態を常にチェックしている白方さん。「これとは別に海上保安庁のサイトも見て、波の予測を立てています。風を読むのが僕の仕事とも言えますね」。
ハワイの大会に挑む!「ランキングを上げたい」
取材から間もない9月末から1カ月、白方さんはハワイのマウイ島で開催される大会「アロハ クラシック」に参戦する予定だ。
「『アロハ クラシック』は波も大きいし、大会のスケールもデカいんで、今はそこに集中して練習を重ねています。日本国内にはプロのウィンドサーファーが10人程度しかいないんですが、若いときから世界に行ってる人が多いので、みんなめちゃくちゃ巧い。
僕は低迷していた時期もあって、やっと真ん中のレベルまで来た感じです。ここからもっとランキングを上げたいですね。テンション高めでやっていますよ。大会はライブ配信で見られるので、よかったらチェックしてください!」。

◇
余談だが、プロのウィンドサーファーになる前はプロテニスプレーヤーを目指していたという白方さん。高校1年で大きな挫折を味わい、自暴自棄になり、結局友人とサーフィンやスケボーに明け暮れていたいう。「それでもずっと、応援し続けてくれた家族の存在があっての今なんです」。
ハイラックスのナンバープレートにも、そんな彼の成長と発展を願う家族の想いが、ある数字に込められていた。