私物を着ているようにスタイリングを作る

ダウンシャツ14万800円、ベルト5万600円/ともにビズビム(F.I.L. オモテサンドウ 03-5778-3259)、パンツ9万9000円/ビズビム 03-5468-5424、古着のタンクトップ4400円/ホワイトサークル white_circle_01、ネックレス16万5000円、右手のリング4万1800円/ともにゴローズ 03-3404-8079、ソックス2640円/ノンネイティブ(ノンネイティブ ショップ 03-5990-4720)、スニーカー1万4300円/コンバース オールスター エイジドOX フォー RHC(RHC ロンハーマン 0120-008-752)、バングルは本人私物
——野口さんが木村さんをスタイリングする際、意識していることはどんなことですか?野口 例えば一般的なモデルみたいに、服を着せればいいだけではない。“木村拓哉”という人間をスタイリングするわけなので、自分たちのファッション観を押しつけるのではなく、“木村拓哉像”を活かしつつ、キャラクターを作らないといけない。
いかにも衣装を着ただけになると服もキャラも馴染まない。だから自分の中では「私服を着ている」というイメージを考えていました。
——木村さんは、野口さんと出会ったことで、ファッションに対する考えに変化はありましたか?木村 バリバリありました。ファッションだけでなく、音楽や映画、食にいたるまで、とにかくいろんな刺激をもらい、それは今でも変わっていません。
なかでも「TPO」はいちばん教わったかもしれません。しかも、いわゆる時間や場所、シーンに応じて服装などを使い分けることだけでなく、“動物的なTPO”。つまり、初めてお会いする人に対してどんな気持ちで接するべきかなど、対人的な嗅覚ですね。
——80年代後期まで古着やゴローズ、ネルシャツ、レッドウィングのブーツなどのアイテムは、一部のコアなファッションマニアの間で絶大な人気を博していたものでした。でもおふたりがタッグを組んでから、それらは瞬く間に大流行し、社会現象にまで発展。90年代に入ると街を歩けばどこにでも木村さんを真似た人がたくさんいました。そういったアイテムがアングラなものからポピュラーな存在になったわけですが、野口さんは意識して仕掛けたのですか?野口 狙ってやっていたわけではないですね。古着やネルシャツなど、いわゆるアメカジ的なものは、もともと本人が好きでした。そこから取り入れる幅を広げたり、逆にモノを絞っていきながらスタイリングを構築していきました。
あの当時は仕事で拓哉と同じような格好をしたいと言われることが多かったけれど、やっぱりそうはならない。同じネルシャツにデニムを合わせて、ゴローズを着けてもぜんぜん違う。
拓哉は自分のもの=私物のような存在感として身に着けられる。それは、本人が好きだという“中身”があるから成立するのだと思います。
木村拓哉●1972年、東京都生まれ。91年SMAPのメンバーとしてメジャーデビュー。長年にわたり日本のエンタテインメント業界を牽引し、現在はYouTubeチャンネルやInstagramでもプライベートを公開する。
野口 強●大阪府出身。スタイリストの大久保篤志氏に師事したのち、独立。ファッション誌や広告を中心にスタイリストとして活動しつつ、マインデニムのディレクターも務める。
OCEANS 4月「これが“本当のラグジュアリー”」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!