リアルとバーチャルで制作することで見える、「陶芸」の未来。
仮想と現実、それぞれの世界を行き来して陶芸作品を制作する坂爪さんに、これからの「陶芸」の未来について聞いてみました。
「今はまだ『バーチャルろくろ』で作った形が、実際にやきものとして手元に届くまでには結構な時間がかかるのですが、将来は3Dプリンタでそのまま粘土が出てきて、すぐに焼く、ということもできるようになるんじゃないでしょうか。つまり、鋳込み技法を経ずに焼成ができると思います。それから、メタバースなどの仮想空間で陶芸教室を開いて、『バーチャルろくろ』を体験するのも楽しそうです。やきもの屋さんもあって、『バーチャルろくろ』でつくった商品が買えたらなお面白そう」
「『電動ろくろ』だったら、何百人の方と一緒に大きなろくろを引いてみたいです(笑)。『電動ろくろ』でこんなことできたらいいなというのを、より現実的にイメージする上でも『バーチャルろくろ』が役立っています。
『バーチャルろくろ』は僕にとって、自分の内にある想像や妄想と現実を行き来するための扉のようなもので、毎回その扉を開いて仮想の産物を現実に引っ張り出している感覚。文化がつくられる過程や、拡張されていく過程には、何かと何かを繋ぐ仲介のようなものが必要だと思っていて。
そうした概念に興味があるので、『電動ろくろ』と『バーチャルろくろ』を掛け合わせること、現実と仮想の狭間で制作することで、新しい文化をつくっていきたいですね」
最後に、改めて「陶芸」の魅力についても伺いました。
「陶芸って、すごく時間がゆっくり流れているんですよね。形をつくるのにも時間がかかるし、乾燥させたり、釉薬をかけたり、焼いたり。それにすぐに思い通りの形ができるわけじゃなくて、ちょっとずつトライ&エラーを繰り返して作っていくもの。
一方で、現代社会の流れってすごく早いと思うんです。みんな乗り遅れないように必死になる。もちろんそうした生活が肌に合う人はいると思いますが、ゆっくりしたい瞬間って誰しもあるものだと思います。そういうときに、陶芸とかやきものって、自然にペースを落としてくれるものだと思っていて。焼くにしても、乾かすにしても、土という素材特有の時間に合わせなくてはいけないので。
人の時間ではなく、土という素材の時間に合わせていくことで、結果的に僕たちの癒しにもつながっているんじゃないかなと思います」