OCEANS

SHARE

無重力空間でろくろを引いたらどうなるか?


主に「電動ろくろ」で作品を制作していた坂爪さんが「バーチャルろくろ」を使ったプロダクトを作り始めたのは、2018年頃。知人から、「バーチャルろくろ」のシステム開発者でデザインエンジニアの東信伍(あずま・しんご)さんを紹介されたことがきっかけでした。

「そもそも回転で土をコントロールできる『電動ろくろ』ってすごく面白いなと思っていて。普通、ろくろって地面に置いて引きますよね。でも実は壁に垂直にろくろをくっつけたとしても引けるんです。重力と回転の関係って不思議だなぁと。そこから、じゃあ無重力空間でろくろを引いたらどうなるんだ? と妄想し始めて。

例えば宇宙でろくろを引くとか。でもすぐには実験できそうにないから、コンピューターでのシミュレーションならできるかもしれない、と。そんなことを知人に話したら、『バーチャルろくろ』というのをやっている人がいるよ、と教えてもらったんです」

過去に「バーチャルろくろ」で制作した作品。

過去に「バーチャルろくろ」で制作した作品。


「バーチャルろくろ」は、ブラウザ上で仮想のろくろ体験ができるシステム「Roquro」を使って、自由に手を動かしながら、好きな形(3Dモデル)を成形するサービス*。必要なものはコンピューターとリープモーションという手や指を感知する機器のみ。誰でもどこでもろくろを引くことができます。

*「バーチャルろくろ」の使用には事前にシステムの導入が必要。詳しくはhttps://roqu.ro/

実際に「バーチャルろくろ」を実演してもらうと、手を空中でふわふわと動かす姿はまるで魔法使いのよう。「電動ろくろ」とは手の使い方が違います、と坂爪さん。



「『電動ろくろ』の延長というわけではないので、ろくろの上手い陶芸家が、急に『バーチャルろくろ』を引いてもうまくできないと思います。むしろ先入観があるから、難しいかもしれません。リープモーションに手の動きを感知してもらうために、機械にとってわかりやすい動きが必要なんです。

例えば、土を使う『電動ろくろ』では指を閉じますが、『バーチャルろくろ』では開いたほうがいいとか。細かい動きよりも大きな動きのほうが感知されやすいので、手だけではなく肩から動かした方が形になりやすいとか。『バーチャルろくろ』ならではの動き方があって面白いですね」


4/6

次の記事を読み込んでいます。