95年目のスタートアップとして
今回、乗ったモデルは、厳密には「バッティスタ55(チンクアンタチンクエ)」といい、バッティスタ・ファリーナ時代に手掛けられた1955年のランチア「フロリダ」の「エレガンスとスポーティさを採り入れたもの」だと、デザイナーのアマンテア氏。
内装に使われるレザーは、高級家具やフェラーリをはじめとしたイタリアの高級車にレザーを提供してきたポルトローナフラウ社に特注したもの。エージング加工と凝った処理がされており、「55(年)」のイメージに合わせて仕立てられている。
ラゲッジルームにはインテリアと同素材で作られたレザーのトランクが収まっていた(写真:Automobili Pininfarina)
「限定150台のバッティスタは、オーダーを受けたら、オーナーと私たちのデザイナーが共同作業のように仕上げていきますから、世界に同じクルマはふたつと存在しないことになるでしょう。それがこのクルマが狙う世界観です」
アウトモービリ・ピニンファリーナのデラッチャCEOは言う。そして「私たちは、自分たちのことを『95年目のスタートアップ』と言っているんです。1930年依頼、歴史に残る名車のデザインを手がけてきました。これからは将来のクラシックスを作るつもりです」とつけ加えた。
また、「ピニンファリーナの新しいビジネスはおもしろいと思いました」と語るのは、日本でアウトモービリ・ピニンファリーナのパートナーを務めるSKY GROUPの担当者だ。SKY GROUPは、世界の高級車ブランドを扱うディーラーグループ、今回はパートナーという形で日本のオーナーのサポートを行う。
Pininfarinaエンブレムがつくリッドを開けると充電口がある(写真:Automobili Pininfarina)
「私たちは、これまでフェラーリやランボルギーニをはじめ、パガーニやブガッティなども手がけてきており、速くて贅沢なスポーツカーのおもしろさに魅了されています。大排気量マルチシリンダーのハイパーカーオーナーが、ピュアEVであるバッティスタにどれだけ興味を持ってくれるかは未知数ですが、ピニンファリーナの名声はよく知られているうえ、彼らもピュアEVに特化するとは言っていないので、市場での可能性に期待しています」
老舗が作る先鋭ハイパーカーの未来に
バッティスタの価格は220万ユーロ(3億7500万円)からで、使う素材などによって価格は変わる。生産台数は、限定150台。
その先には、同時に東京に持ち込まれた「B95」が控えている。
バルケッタボディを持つB95は10台のみが生産される超希少車となる(写真:Automobili Pininfarina)
小型フルオープンモデルを指すバルケッタなるボディ形式で、ウインドシールドをもたない、1950年代のレースカーのような雰囲気だ。こちらは10台限定で、440万ユーロ(7億5000万円)。
フェラーリやランボルギーニと比較してもたいへんに高価だが、それだけにとどまらない、とアウトモービリ・ピニンファリーナの広報担当者。「より買いやすい、(バッティスタより)生産台数の多いモデルの開発も視野に入れています」という。
それでも相当な金額になるであろうが、ハイパーカーのマーケットは決して小さくないのだろう。老舗が作る先鋭の世界、楽しみではないか。