この数年、世界的にブームとなっているナチュラルワイン。通常のワインよりもテロワール(地域性)や、造り手の個性が反映されやすく、さまざまな味わいを楽しむことができるとあって、日本のレストランなどでも見かける機会も増えている。
このナチュラルワインの世界最大級の祭典として、世界中から注目を集めているのが「RAW WINE FAIR」だ。
RAW WINEは、ナチュラルワインの普及と発展を目的に、フランス人女性初のマスター・オブ・ワイン、イザベル・レジェロンが、10年前に創業。今ではワイン生産者、醸造家、輸入業者、ワイン生産者協会などをつなげる、世界最大級のナチュラルワインのプラットフォームにまで成長した。
これまでロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、トロント、マイアミ、ベルリン、パリ、コペンハーゲンなどでイベントが開催され、2024年5月、ついに日本初上陸を果たした。
ヨーロッパでは、少しずつ法律的な定義がされてきているものの、まだナチュラルワインには明確な定義がない。
だが、RAW WINEで紹介されるナチュラルワインは、「ブドウの産地はオーガニックまたはバイオダイナミック認証を受けていること」「ブドウは手摘みで収穫していること」「亜硫酸塩の総濃度上限が1Lあたり50mg以下であること」など、しっかりとした基準が設けられているのが特徴だ。
今回開催された「RAW WINE TOKYO」では、世界15カ国以上、90以上の生産者が集まり、100種類以上のナチュラルワインをテイスティングできるとあって、600枚のチケットは早々にソールドアウト。日本未発売のワインも数多く登場し、日本各地から醸造家やレストラン関係者なども足を運んでいた。
さて、ワインと聞いて、まず思い浮かぶのは、フランスやイタリア、スペインなどのワインだろう。だが、世界は広い。このイベントでは、メキシコやチリ、レバノンなど、あまり飲む機会のない生産国も参加し、その知られざる味を楽しみたいと、ブースは大賑わい!
とはいえ、100本以上ものワインをすべて飲むのは、よほどの酒豪でも難しい。
そこで会場で出会ったワイン関係者に「試飲したなかで、おすすめのナチュラルワイン」を聞いてみた。日本未発売のワインも多く含まれるが、今後発売されることもあるかもしれないので、ぜひチェックしてみてほしい。
ワイン関係者数人から「あんなワインが作れるとは」「すごくユニークでおいしい」とおすすめされたのは、韓国のワイナリー「MEOGOM」。
「韓国には約100のワイナリーがありますが、ナチュラルワインを造っているのは3軒ほどです」と語るのは、造り手のJoshua hojung chungさん。
白ワインに使われていたのは「チョンソ」という韓国の土着品種。韓国にも土着品種があるとは、お隣の国ながら、知らないことはまだまだ多い。ちなみに赤ワインは日本ワインでもおなじみの「マスカットベリーA」を主体としている。
韓国料理というと、唐辛子やニンニクの効いた料理を思い浮かべる人も多いだろう。それゆえ韓国料理に合うパワフルな味わいかと思いきや、どちらのワインもスムースで軽やかな飲み口。和食との相性も良さそうだ。
ワイン造りには適さないのでは? と思うような国のワインもあった。
それがフィンランドの「Noita Winery」。
フィンランドは夏でも気温が上がらないなど、ブドウの生育には向かない気候とされてきた。そこでこのワイナリーは自社畑を持たないアーバンワイナリーとしてスタート。大半はオーストリアから輸入したブドウを使って醸造をしているが、最近では自社でPIWI品種を少しずつ栽培しはじめているという。ロックなラベルが印象的だが、どのワインもとてもクリーンで洗練された味わいになっている。
ちなみにPIWI品種とは病原菌に耐性を持つブドウ品種のこと。農薬に頼らず、気候変動などによる病害を減らすことができる、サステナブルな品種なのだ。
中南米のペルーから参加していた「Bodega Murga」も会場で注目されていたワイナリー。
ワイナリーのあるピスコ産のブドウを使い、伝統的な製法で作られたこちらのワインは、どれもクリーンで、エレガントな味わい。「ペルーワインのポテンシャルに驚いた」という声も、多く聞かれた。
最近、国内でもりんごから作られた「シードル」が人気を集めているが、スイスの「Cidrerie A Heftig」は、なんとシードル専門のワイナリー。
ワイナリーのあるベルン地方の古樹から採れた、稀少な品種のりんごを主に使っていて、それぞれのりんごの特徴を活かしたシードルが作られている。こんなに多くのりんご品種がスイスにもあるのかと驚くとともに、甘味や酸味など、りんごの個性が想像以上に出ていて、シードルの新たな魅力に気づかせてくれた。
日本初開催ということで、日本を代表するワイナリーとなった「ドメーヌ・タカヒコ」など7ワイナリーと、4つの日本酒の酒蔵も参加。開催国のワインを知りたいと、海外の生産者もテイスティングに訪れ、活況を見せていた。
ナチュラルワインの奥深さを堪能できた今回のイベント。次回開催は未定だが、日本に再上陸した際には、ぜひ参加してみてほしい。