人のモノサシではなく、自分たちの価値観で、よりリアルに、格好よく。ファッションにおける「ストリート」の根幹にあるこんなマインドが、何かと小難しい(気がする)ワインの世界でも拡大中。それがナチュラルワインである。
しがらみ不要、無用なルールは御免蒙る。とびきり美味い一杯を追求するストリートマインド全開なナチュラルワインは、オーシャンズ世代にこそ相応しい!
最近、何かと耳にする“ナチュラルワイン”。
オーシャンズは幡ヶ谷にあるワインショップ「フロウ」を訪れ、店主・深川健光さんにナチュラルワインの
基本の“き”を教わり、
ハズさないナチュラルワインも具体的に教わった。そのなかでわかったことのひとつが、寝かせることでもっと美味くなるナチュラルワインも存在するということ。
どうやらナチュラルワインは、一般的なワイン以上に、コルクを抜くタイミングや開けてから飲み切るまでの時間経過による味の変化が激しいようだ。それは飲むタイミングが難しいとも言えるが、言い換えればそれだけ幅広い可能性を秘めた、楽しいワインだとも言える。
今回は深川さんセレクトの“寝かせて楽しむナチュラルワイン3選”を紹介するが、その前に、もう少しこの話を掘り下げてみよう。
ワインなのに「豆」っぽい? ナチュラルワインがもっと楽しくなる「豆」知識
ナチュラルワインを語るとき、「豆っぽい」という言葉を耳にしたことがあるだろうか? 深川さんは、「ナチュラルワインを扱う人なら『豆になる』という表現はよく使う」と言う。
しかも豆は豆でも、味が濃厚な“だだちゃ豆”だ。もちろん、良い意味ではない。なぜ豆っぽい味がするのかはわかっていないそうだが、抜栓後すぐに飲まないと豆っぽくなるものがあるので、お店の人とよく相談しながら購入を決めたほうがいいだろう。
深川さんもワインを購入する客に対し、必ず“飲むタイミング”は確認するという。
「豆っぽさ」がないものでも、すぐに飲んだほうが美味しいものもあれば、コルクを抜いてから数日程度は味の変わらないものもある。なかには数日から数週間かけて毎日変化を楽しみながら味わうものもあるし、コルクを抜かずに数年間寝かせることでより美味しくなるものもあるという。
もちろん一般的なワインも寝かせることで味わいが変化するのは言うまでもないが、ナチュラルワインの場合はそれがより顕著であり、そこにもナチュラルワインならではの楽しさがあるのだ。ということで、いよいよ深川さんがオススメする「寝かせて楽しむナチュラルワイン3選」をご紹介しよう。
その可能性、無限大。寝かせて楽しむナチュラルワイン3選
①オニス・エトワール[2015]
キュヴェ名のオニス・エトワールとは、あの香辛料の「八角」のことで、味はスパイシーなミディアムボディの辛口。生産者はナチュラルワインに見せられたブルターニュ出身のカップル。2012年からスタートしたばかりだが、畑では有機農法を実践し、農耕馬で耕作。本格的なナチュラルワイン造りに一切の妥協なしだ。
②ラ・ボエム ヴィオレット[2016]
果実味が濃く、ワイルドな味わい。プルーン、カシス、ミュール、グァバ、スミレ、イラクサの豊かな香りが特徴で、深川さんが「今年一番美味しかった」と評価する一本。「軽めではありますが、味わいがぎゅっと詰まっていて、ちょっと木みたいなニュアンスがある。寝かせてみたら面白そうですね」。生産者は元IBMのコンピューター技師で、しばらくは二足のわらじを履いたものの、今はワイン造り一本。
③シャルム ランジュ・ヴァン[2014]
スパイシーで熟成感があり、味も色も濃いめな白。「最初に飲んだときは硬い印象がありましたが、それから1年後にこれを『どうしても飲みたい』と言ったお客さんがいたので開けてみたら、だいぶ良くなっていました。今後がさらに楽しみです」。生産者のジャン=ピエール・ロビノはもともとパリでワインバーを経営していた人物で、黎明期にナチュラルワインを広めた立役者としても有名。自らも1999年からワイン造りを始め、上質なナチュラルワインを提供し続けている。
[取材協力]ワインショップ フロウhttps://wineshop-flow.business.site/03-6804-7341ぎぎまき=取材・文