雲谷庵跡の内部の様子
茅葺屋根の庵は、見学自由。戸を開けて内部に入る。居室は2つのみでいたって簡素。奥の部屋には囲炉裏があり、雪舟の肖像画が掛けられている。ひとりでたたずんでいると、時空を超えて大家が筆を走らせているシーンが思い浮かんでくるようだ。歴史のロマンを感じる空間だ。庭にある高台に上がると瑠璃光寺五重塔を眺めることができる。雪舟も眺めたのだろうか。
ちなみに雲谷庵跡がある一帯の地名は「天花(てんげ)」という。なんとも優雅な響きがあるではないか。
雲谷庵跡の内部の様子(筆者撮影)
もう一カ所、ぜひとも訪れたいスポットがあった。雲谷庵跡と道を挟んだ場所にある「菜香亭」である。明治10年の創業から平成8年まで著名人に親しまれてきた料亭を移築復元した建物で、明治、大正、昭和、平成の歴史の舞台となった。
菜香亭の名付け親である明治の元勲・井上馨の還暦祝い、伊藤博文の夜会などが行われるなど「山口の迎賓館」として存在感を放ってきた。大広間には伊藤博文、山県有朋から佐藤栄作、安倍晋三など県出身の政治家の書が並んでいる。明治以降の政治家や文人たちの交友を通じた歴史の断面が刻み込まれた現場をじっくりと見学したかったのだが、あいにく休館日でかなわなかった。
山口の迎賓館「菜香亭」(筆者撮影)
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