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一つ星だけで200軒以上──

──次に目指すのは?

今回ミシュランを獲得して、ガッツポーズの後に、がっかりしたことがあったんです。当然ですが、僕の後にも何人も名前が呼ばれて、結局新規獲得だけで約30軒、既存も合わせたら一つ星だけで200軒以上ありました。あ、こんなにいるんだ…と。「特別な存在になれるかも」と思っていたのに、ステージに上がれば、やっぱり「その他大勢の一人」なんだとがっかりしてしまいました。「俺はこんなもんじゃない!」とまたしても思ってしまったんです(笑)

ミシュランの星を取るために何かをする、というのは考えたことはないですが、やっぱり特別な存在になりたい。「世界のベストレストラン」や「OAD」にももちろん入っていきたいですが、今、明確に目指すのは二つ星ですね。ミシュランは相対評価ではなく絶対的な評価なので、僕らの品質を維持していくという意味でもありがたいです。

でも同時に、「世界で一番のレストラン」を造っていきたいし、それを議論できる土俵に立っていたい。「世界で一番のレストラン」というのは難しいですが、評価されることと、自分達が確信と自信をもってお客様をおもてなしすることははまた違うベクトルだと思います。世界で最高のもの、時間を造り出している自覚と責任は必要だと思っています。

例えば、お客さんに近づく時には左足の方がいいのか? など細かい部分まで妥協することなくストイックでいたいと思うし、料理だけでなく、シェフとしてレストラン全体を見る視点を持っていきたいですね。



──例えば海外を目指す若い料理人に、どんな言葉を送りたいですか?

まず何より、海外に出るという手段が目的にならないようにしてほしいですね。とりあえず自分を変えるためにまず行動してみるのは大事ですが、人生って短いです。

海外に行って帰ってきた、だけではただの修学旅行になってしまうし、海外に行ってそこで何をしたかが大事だと思います。なので、僕のところで働きたいという若い子たちにも、「何がしたくて来たのか?」を必ず聞くようにしています。うちを踏み台にして頑張ってくれる、ガッツのある人が出てきてほしいですね。


水上彩みずかみ・あや)◎ワイン愛が高じて通信業界からワイン業界に転身。『日本ワイン紀行』ライターとして日本全国のワイナリーを取材するなど、ワイン専門誌や諸メディア等へ執筆。WOSA Japan(南アフリカワイン協会)のメディアマーケティング担当として、南アフリカワインのPRにも力を注ぐ。J.S.A認定ワインエキスパート。ワインの国際資格WSET最上位のLevel 4 Diploma取得。




Forbes JAPAN=提供記事

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