コーヒー豆、実はかなり不衛生だった……
ーーなぜコーヒー豆を洗うことにしたんですか? コーヒー好きが高じて、10年ほど前に自分で焙煎し始めました。一般的な教科書には豆を洗う工程はなくて、「え、洗わないんだ?」と疑問を持ったのが発端です。
豆って、数ヶ月をかけて常温コンテナで外国から運ばれてくるじゃないですか。それを考えれば、衛生的にも絶対に洗った方がいいと思い、試しに洗ってみたんですよ。
ーー洗ってみてどうでした? あまりにも汚れていてびっくりしました……。いろいろと試して、50℃のお湯で洗うのがベストだという結論に至ったんです。
ーーなぜ50℃なのでしょう? 菌は60℃以下だと活性化されてしまいます。死滅させるためには、60℃以上じゃないといけません。でも、そんなに熱いと手で洗うことができないじゃないですか。ゴシゴシと手で洗えて、なおかつできるだけ菌をやっつける温度。それがだいたい50℃なんです。
ーーでも、50℃では菌が活性化してしまうのでは? 焙煎時に185〜245℃程度の熱を一定時間加えるので、洗浄するときは可能な範囲の高温で洗浄すれば大丈夫です(※)。
(※)芽胞菌の類は、生存できない環境でバリアを張って耐えるものもあるので要注意。 コーヒー色の裏に隠れていた汚水の正体
虫食いで穴の空いた豆やカビ、過発酵豆を丁寧に取り除く。
ーーそれでは早速、アームズメソッドの工程を見せてください。 まず、目視でわかる範囲で欠点豆を取り除きます。
ーー欠点豆というのは、どんな状態の豆ですか? 虫食いで穴が空いてる豆、未成熟の豆、過発酵のもの、カビている豆ですね。欠けたり、割れたりしているものも菌に侵されているリスクがあるので、取り除きます。運搬の過程でカビたり、過発酵で腐ったりする場合もよくあるんです。
ーーなるほど。 まず、1回目のすすぎでこれだけ汚れが出ます。
50℃のお湯で生豆をゴシゴシと拝み洗い。
洗浄1回目の水の色がこれ……。
ーーこれはコーヒー豆の色ではなく、汚れによる着色なんですね。普段、この汚水ごと飲んじゃってるということですか? そうですね。なかには豆を洗ってる方もいますし、冷蔵コンテナで運んだり、空輸したりなど、工夫をされている方もいますが、僕が知る限り、洗わずにそのまま焙煎するケースがほとんどだと思います。
豆のピンホールにお湯が染み込むことでカビの色がはっきりし、目視ではわからなかったカビ豆を確実に弾くことができるのも熱湯で洗浄する副次的作用。
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