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極北と南国をつないだ“青の神秘”

「僕がアラスカへ行くのは、太古の昔から地球上で起きている水の循環が創造する、氷河の美しさを撮りたいから。なかでもグレーシャーブルーと呼ばれる独特の青さは、何度シャッターを切っても、また撮りたくなるほどに魅力的なんです」。

氷河が青みがかるのは、やはり壮大な自然の営みによる。雪が積層されていく過程で空気や気泡は押し出され、透明度と密度を増した氷が生み出されると、7色ある可視光線のうち青だけが吸収されず、目に映り込んでくるのだ。

その青の色彩は、氷ごとに変わり、天候によって変わり、覗き込んだクレパスごとに変わるといったように、ひとつとして同じものがない。

「その多様さは氷の洞窟に入るたびに未体験の青を感じるほどなんですけれど、実は青色をきっかけにハワイの海中でアラスカの氷河が突然フラッシュバックしたことがあるんです。

オアフ島の10kmほどの沖合で知人のプロサーファーとフリーダイビングをしたときのことでした。泳ぎに長けた彼はどんどん深く潜り、ポツンと僕ひとりが暖かな青い海に包まれていることを意識した瞬間、凍てつく氷の世界を思い出したんです。あれは不思議な体験でした」。

極北のアラスカと南国ハワイをつなぐ青のエピソードは、“水の青さに取り憑かれた者だから遭遇できた”と思えるほどに幻想的だ。そしてそんな神秘に魅せられた山田さんは既に新たな目的地を考えている。

「海に流出するハバード氷河です。なにせ海に面する氷河の幅は10kmに及び、海面からは100mほどの高さの氷壁がそびえ立つという場所。しかもその氷壁が次々に海の中へ崩落していくんです。そのスケールを、いつか写真で発表したいですね」。

ちなみに近くにはヤクタットというグッドウェーブが期待できる村がある。そう言うと「ハイシーズンは晩夏です」とチェック済みであることを告げるように、頬を緩めた。
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山田博行=写真 小山内 隆=編集・文

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