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氷河は後退を続けるが、その美しさは変わらない

氷河とは文字どおり氷の河だ。形成過程は海から始まり、蒸発した水蒸気が雪となって山に降る。この雪はアラスカなどの極地では溶けることがなく、長い年月をかけて巨大な雪の塊となっていく。こうした自然の営みが繰り返され、重さを増すことで雪は圧縮されて氷となる。

氷として大きさを増していくと、重力を理由に、より標高の高いところにできた氷に押されることにより、前述したような低地へ向けての旅路が始まる。最終的なデスティネーションは海である。

「バキバキっと大きな音を立てて、巨大な氷壁が海へ崩落していく様子を見にいく観光ツアーもありますが、実際のところ、アラスカでは海に到達する氷河が減ってきています。

後退し続けていることで注目されているコロンビア氷河に関して、氷河研究者による1989年発表のリポートに“76年の段階ではこのあたりまで氷があった”と記されたその位置と、2022年時点の氷の位置とを個人的に比較してわかったのは、氷が失われたのは川崎から柏にいたる広範囲だったということでした。しかも、この50年の間にです」。

氷が消えた要因に関する科学者たちの議論は長く続き、100%とは言い切れないようだが、基本的な要因は温暖化だとされている。

そもそも温暖化に警鐘を鳴らすことへの意識はなかった山田さんも、現場に入り、変化を目の当たりにしてきたことで状況を伝えようとする熱意が生まれた。当事者意識を抱くようになるのは「写真家あるある」と言い、機会があれば撮影した写真によるスライドショーなどを催して、現地の状況を共有している。

それでも山田さんの根幹は少しも変わらない。氷河の世界に足を踏み入れ、今も踏み入れ続けているのは、その美しさゆえなのである。


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