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おからやイヌリン(水溶性食物繊維の一種)などを含み糖質を抑えて食物繊維が炭水化物の約半分を占めるようにしたクッキー、または普通のクッキーを1週間続けて間食に食べてもらい、その後の夕食の血糖値を比較するという実験を行ったところ、食物繊維の多いクッキーを間食に食べたときのほうが、間食時も夕食時も血糖値が低くなったそうです。

この結果を受けて、食物繊維が豊富な間食は遅い夕食時の血糖値スパイクの抑制になる、と柴田重信先生はアドバイスします。それが、「攻めの間食」なのです。

また、間食をとって少し血糖値を上げること自体、夕食後に高血糖を招きにくくなる、とも柴田重信先生はいいます。

どういうことかというと、昼食から夕食までの時間が長いと、お腹が空いて、夕食前に脂肪の分解がうながされ、遊離脂肪酸というものが血液中に増えます。

遊離脂肪酸は、たくわえられた中性脂肪が分解されて血液中に溶け出したものです。「脂肪が分解されるならいいじゃないか」と思うでしょうか。

ところが、遊離脂肪酸はインスリンの働きを邪魔するのです。そのため、遊離脂肪酸が血中に増えていると、インスリンが効きにくくなって、高血糖になりやすい。その点、うまく間食をとって、ある程度血糖値を上げてあげると、遊離脂肪酸が出ず、インスリンの働きが邪魔されないため、高血糖になりにくいというわけです。

加えて、夕食前にお腹が空きすぎると、夕食時に、つい早食いになりませんか? 早食いをすると、血糖値が急に上がります。私は、早食い防止という意味でも上手な間食は理に適っていると思います。

昔から「ゆっくり、よく噛んで食べなさい」といわれるように、よく噛んで食べることはやっぱり大事なのです。

噛むという動作には、セロトニンの分泌をうながす作用があります。セロトニンは、幸せホルモンとも呼ばれ、自律神経を安定させ、心を落ち着かせる作用のある脳内物質でしたよね。ちなみに、セロトニンを増やす行動の1つとしてリズム運動が効果的ですが、噛むこともリズム運動の一つです。

副交感神経を優位にしてイライラ・疲れを防ぐ

ここまでは、夕食後の高血糖を防ぐという間食のメリットでした。高血糖は確かに避けたいもの。ただ、「低ければいいということではありません」と、『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』 (アチーブメント出版)の著者で、医師の満尾正先生は指摘します。

この本は、アンチエイジング専門クリニックを営む満尾正先生が、食こそが最大のリターンを得る投資である、とビジネスパーソン向けにパフォーマンスを上げる食事法を紹介したもの。

そのなかに次のような一節があります。
血糖値が60㎎/㎗以下になる「低血糖」状態は、パフォーマンスを著しく落とします。集中力や思考力の低下、無気力、イライラ、めまい、冷や汗、手の震えなど、簡単にいうと電池切れの状態となります。
『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』より
お腹が空くと、イライラしたりすることは、みなさんも経験上、ご存じだと思います。なぜイライラするのかというと、自律神経のうち交感神経のほうが優位になるから。

お腹が空くのは血糖値が下がってきたサインです。血糖値が下がり、飢餓状態になると、人間は、交感神経が優位になり、イライラして攻撃的になるようにできています。それは、太古の昔、人類が狩りに出かけていた頃の名残です。狩りに出ていくときには好戦的になり緊張していなければいけないので、交感神経の働きを高め、イライラさせていたのですね。

ですから、お腹が空いたときや「なんだかイライラしているな」と感じたときに、少量の間食をとるのは、私もいいことだと思います。

仕事中の間食は15分くらい時間をとる

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そもそも仕事中は交感神経が高ぶりやすいもの。間食をとって、お腹にものが入ると、消化吸収のために胃腸が動き出して副交感神経優位になります。仕事で高ぶった交感神経を抑え、脳の疲労を防ぐという意味でも、ほどよい間食は疲労予防になります。

ちなみに、副交感神経から交感神経への切り替えは0.2秒くらいと早い一方、交感神経から副交感神経へ切り替えるには5分ほどかかります。ですから、仕事中の間食は、15分くらい時間をとって、リラックスする時間を確保するのがおすすめです。そうするとリフレッシュできます。もちろん、仕事の資料もスマホの画面も遠ざけてくださいね。



梶本修身=著者
東洋経済オンライン=記事提供

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