「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは…… 本日の相談者:ソフトウェア開発会社・42歳「わが社はコロナ禍でリモートワークを推進してきたのですが、やはりコミュニケーションが難しいということもあり、リアルでのオフィスワークの期間を少しずつ増やすことになり、今は週3日出社に。
しかし、メンバーにはリモートワーク派とオフィスワーク派に分かれてしまい、どのようにチームを構築すべきか迷っています」。
アドバイスしてくれるのは……そわっち(曽和利光さん)1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。
全員が完全に賛成することはない
組織にはさまざまな性格や価値観の人がいるので、どんな案件に関しても100%意見が一致することはあまりありません。そのため「いろいろあってよい」ではなく、「ひとつに決める必要がある」というものに対しては、慎重に物事を進めなければなりません。
例えば、その代表的なものが人事制度(評価・報酬制度)でしょう。最終的に誰がいくら報酬をもらうのかを決める極めて重要なルールですが、これは「ひとつに決める必要がある」ものです。
しかし、組織の中には、メリハリのある実力主義を望む人もいれば、穏やかな平等主義を望む人もいますので、最終的な制度に全員が完全に賛成ということはほぼないでしょう。
例えば人事制度はどのくらい手間をかけるか
ですから、人事制度を作る際には、組織はかなりの手間をかけて進めていきます。まずは、経営幹部やマネージャー、社員に対してアンケートやインタビューでどのような意見が多いのかを調べます。
また、パーソナリティテスト(性格検査)などを用いて、この組織がどんな性格や価値観の人たちがどの程度の割合で分布しているのかを見ます。これは、どういう施策を打てば、組織のどんな人たちがどれくらい賛成or反対するだろうか、どんな反応をするだろうかを予測するためです。
そして、これを踏まえて、人事制度設計上にある数十個の論点(行動主義か結果主義か、相対評価か絶対評価か等)を検討して、腹案を作成し、それを各所に打診して周り、修正案を作ります。
並行して、その制度を施行すれば、誰にどんな結果(評価や報酬)がつくかもシミュレーションします。そのようなプロセスを経て、満を持して最終案を発表します。
その際も、説明会などを開いて丁寧に対応します。多くの場合、このプロセスは半年から1年ほどかかります。
働き方の問題は、人事制度より軽く扱われている
さて、長々と人事制度設計の話をしたのは、リモートワークかオフィスワークかという働き方の問題は、大げさに言えば社員全員の生活が変わり、人生が変わるものですから、人事制度と同じくらいの重みのある問題です。
ところが、さまざまな組織を見ていると、人事制度と比較にならないくらい「軽く」意思決定をして進めているところが多い。
全社員の考えを集めることもしなければ、パーソナリティ分析もしない。この問題を検討するプロジェクトチームも集めなければ、丁寧な説明会も開かない。
世の中にリモートワークに関する研究は結構出ているのに、ファクトを集めて根拠を作ることもしないのです。
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