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反対意見は無くせない。納得してもらうしかない

このような力の入れ具合で、重大な働き方に関する合意形成を行うのは無理です。雑に進めれば、意見の対立が表面化して、今のような状態になることは当然でしょう。

解決方法は、端的に言えば、「もっと手間をかけて合意形成しましょう」ということに尽きます。価値観の違いなので、意見の対立自体は防ぎようがありません。

しかし、意見が対立していても、人事制度のように丁寧に物事を進めれば、人は自分が反対だったとしても「組織の総意なのであれば」と最終的には納得して従うものです。

「ひとつに決める必要があるもの」には、全員賛成にならないことは、誰でもわかっていることなのですから。


まずは紛れもないファクトを集める

では、具体的な手順ですが、先にも述べたようにリモートワークに関しては現在進行形でさまざまな研究や調査が出てきています。まずはネット検索でも良いので、それらのファクトを集めてみましょう。

リモートワークのほうが社員のワークエンゲージメントが高かったりする一方で、情報共有の減少により組織の創造性が低下したり、若手の育成に問題が生じたりする等々、組織へどのような影響があるかさまざまな結果が出ています。

想像の範囲内のファクトかもしれませんが、きちんとしたデータで押さえておくことが重要です。「好き・嫌い」という価値観の対立を解消するのは、ファクトによる「効果的・効果的でない」という組織への利益の論理でしかないからです。ここは理論武装しておきましょう。


社員の声を聞きながら同時に説得する



ファクトが集まれば、自社の事業や仕事から考えて、リモートワークの程度はどれほどであるのが良いかという腹案はできるでしょう。

その上で、人事制度のときに述べたような社内調査を行いましょう。その際、腹案が先にあれば、インタビュー内で腹案に反対しそうな人には説得的な情報提供を入れておくことができますし、アンケートを取る際にも腹案を肯定するようなファクトを入れて「こういうファクトがあるのですがどう思いますか」と事前に反対派に釘を刺しておくこともできます。

つまり、単純に社員の意見を聞くのではなく、腹案を最終的に納得してもらうために、「声を聞きながら、同時に説得する」のです。

いきなり自分と反対の方針が決まれば怒る人でも、徐々に「もしかすると自分と反対の方針になるかもなあ」と予測させられれば、最終的に納得してくれる可能性は高まります。


最後は数の論理とファクトで押す

このような丁寧な情報収集と事前説得が終わったら、最後は方針を打ち出すのみです。

「社員の皆さんから意見をいろいろ伺った結果、このような方針にしました」と、あくまで「みなさんの意見を拾って多数決で決めた」となれば、さらに美しいです。

そして、調べたファクトを用いて「こういう効果があるので、確かにこのリモートワークの方針は当社にとって効果的だと考えられます」とその方針の正当性を説明しましょう。

このようなことまですれば、いくら反対意見の持ち主でも、民主的に決まり、かつ科学的にも妥当性の高い方針に反対しようとは思わないでしょう。

手間がかかりますが、リモートワークかオフィスワークかを決めることは社員にとって人事制度と同等な重要性があることを理解して、丁寧に慎重に進めてみてください。

グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp


曽和利光=文

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