「何か伝えたい背景があるに違いない」と考える
言い換えると、「何かおかしなことを言っている」と思うのではなく、「会長が言うのだから、何か伝えたいことがあるに違いない」と思ってみるということです。
確かに、発した言葉をそのままの意味で受け取ったら、「意味不明」「間違っている」ということもあるでしょう。それは老化のせいかもしれません。
しかし、表現は間違っていても、本当に伝えたいことはそうではなくて全く正しいこともありえます。
長年連れ添った夫婦の間で「あの、その、コップ取ってきて」と言われて、「これでしょ」といつものお茶碗(コップではない)を出す、というようなもので、表面的な言葉をそのまま捉えて反応するのではなく、背景の本意を探って相手が本当に言いたいことを把握できるようになれないものでしょうか。
一番の「理解者」になる
もし、上述のようなことが起こっているとすれば、会長は「どいつもこいつも俺の言うことを全然理解してくれないやつだ!」と日々怒り心頭でしょう。
そこで、もし質問者が会長の言葉足らずな(勝手に決めつけていますが……)発言を、背景を推測してきちんと理解できる人になれたらどうなるでしょうか。
きっと「おお、俺のことをやっと理解できるやつがでてきた」となるのではないでしょうか。
「それはこういうことですよね」「そうそう」と理解してくれる側近は権力者にとってはとても便利です。そこまでになれば、あなたを自分の「翻訳者」として重宝してくれることでしょう。
「翻訳者」は「権力者の代理人」
そうすればあなたは権力者である会長の代理人のようなもので、あなた自身に権力が今度は集まってきます。会長はあなたを通じてメッセージを出すでしょうし、社員はあなたを通じて会長に物事を伝えてもらおうとするわけです。
豊臣秀吉(=会長)と千利休(=あなた)の関係のようなものでしょうか。秀吉には直接言いにくいことを、利休に伝えてなんとかわかってもらうということです。
そして、「情報は権力」ですから、会社のことが一番よくわかるようになったあなたは実際に権力を持ち(実権を握り)、ひいては会長に物申せるようになっていくということです(利休はそれが過ぎて、秀吉に恐れられて切腹させられたのかもですが)。
歴史をたどることで相手を知る
さて、それでは、会長の言葉の背景を理解し、翻訳できるようになるためにはどうすればよいでしょう。「知ろうとする姿勢」を持つだけでは足りません。
相手の思考パターンを知るためには、その人がやってきたこと、判断してきたことの跡、つまり「歴史」を知ればよいのではないでしょうか。質問者は会社の歴史をどこまで知っているでしょうか。
会長はなぜ起業したのか、モチベーションの源は何か、社名の由来は何か、一番の危機はなんだったのか、そしてそれをどう乗り越えたのか。
そしてもちろん会長自身の歴史、ライフヒストリーもできれば知ると良いでしょう。小さい頃はどんな環境で育ったのか、会長の人格を作ったきっかけはなんなのか、等々。
人は経験から思考の型ができるわけですから、それらを知れば自ずと相手の思考がわかるのではないでしょうか。