「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは…… 本日の相談者:システムエンジニア・42歳「システムエンジニアが多い職場の管理職をしています。リモートワークが主体で働くメンバーが多いので、会社からはメンバー1人ひとりの状況を把握してほしいと言われ、1on1ミーティングの制度が導入されました。
実際、最初の1、2回は良かったものの、回を重ねるにつれ話題が尽きてしまい、単なる業務報告になってしまうことも。メンバーの本音を引き出せるようなテクニックを知りたいのですが、ぜひアドバイスをください」。
アドバイスしてくれるのは…… そわっち(曽和利光さん)1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。
そもそも「本音」は口に出せないもの
「本音」とは辞書を引くと「口に出して言うことがはばかられる本心」という意味ですので、基本的には「口に出せない」ものです。
それを無理に引き出そうとしても、「北風と太陽」の童話の北風のように、逆に本音の声は固く閉ざされてしまうのではないでしょうか。
それではどうすればよいのか。人は「目は口ほどに物を言う」ということわざのとおり、「口に出せない」ものは「体」で表します。
特に日本人は世界で最もハイコンテクスト(共通の文化基盤が多い)な民族と言われており、言葉にしないでコミュニケーションを取ることが美徳ですらあるわけですのでなおさらです。
「非言語」のメッセージに注目する
ですから、まずは、メンバーが発する「非言語」のメッセージに注目してみてはいかがでしょうか。そして、そこから彼・彼女が何を考えているのか、どんな気持ちでいるのかを類推してみるのです。
「非言語」のメッセージとは、例えば、相手との間の取り方、姿勢、目線、声の抑揚、身振り手振り、服装や持ち物、匂い、身体的接触などから伝わるメッセージのことです。
これらの「非言語」の手がかりは、もちろん深い意味もなく行われることもありますが、相手の無意識の意向が示されていることも多いものです。
しかし、仕事の世界では、言葉に余りに注視するばかりに、これらの「非言語」がよく無視されています。
そもそも自分は信頼されているのか
まず、見るべきは、管理職である自分がメンバーから信頼されているかどうかです。疑義を抱いている相手に本音を伝えることなどないでしょう。
例えば、1on1ミーティングをしているときの姿勢に注目してみてください。相手の「おへそ」や「足」はどちらを向いているでしょうか。
嫌いな相手の場合、顔はこちらを向いていても、体は避けようとして違う方向を向いていることがあります。
また、「腕」はどのようになっているでしょうか。腕組みをしているなら、防御をしたり、不安や緊張を和らげたりするために自分に触れているのかもしれません。
自分が「何者か」わかってもらう
もし、そのような「非言語」の手がかりが見られたら、相手から何かを引き出そうとする前に、自分を相手に開示して信頼してもらわなければなりません。
もちろん「何歳」とか「上司」とか形式的なことは知っているでしょうが、本質的にどんな人かを伝えるということです。
「信頼」とは別の言い方をすれば「予測可能性」、つまり「この人は、こう言えば/こうすれば、きっとこうしてくれるだろう」と確実に思えるかどうかです。
そう思えたら反応が予測できるので安心して本音を話せます。そのためには、「この人はどんな性格・価値観の人なのか」「どんな思考・行動パターンを持っているのか」を知らせなくてはいけないのです。
「非言語」メッセージが変化するかどうか
信頼してもらえたなら、「非言語」のメッセージが以前とは違ってくるはずです。物理的な距離が近くなってきたり、体の方向があなたに向いてきたりします。
声も溌剌としてきますし、目を合わせる回数が増え、瞳孔も開いてきます(瞳孔まではなかなか見えないでしょうが)。これらのことが起こると必ずそうということは言えませんが、大切なのは変化です。
以前の相手とは「非言語」から伝わるメッセージが異なってくればしめたものです。ようやくあなたは相手と本音の話ができる土俵に立ったということです。
「この人になら本当のことを言ってもよいかもしれない」と心を開いてくれたかもしれません。
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