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リモートワークにおける工夫

ちなみに、コロナ後に浸透したリモートワークでは、日頃のコミュニケーションはオンラインがほとんどになってしまいましたので、この「非言語」に注目するということ自体が難しくなるために、余計に注意しなければなりません。

同じ時間あたりでは、対面よりもオンラインのほうが非言語情報が少なくなりますので、例えば、1on1のミーティングにおいても、本題に入る前のアイスブレイクの時間を長く取ることで得られる非言語情報量を増やし、相手の変化に気づくようにするなどです。

また、テキストチャットなど、文章でのコミュニケーションも増えますが、ちょっとした言葉遣いの変化などに注意して、足りない非言語情報を補うことも必要でしょう。

ようやく出てきたヒントを見逃さない

さて、ここで重要なのは、相手の変化が見えてきてもまだ急がないことです。「本音」を伝えたいと相手が思っても、「言葉にするか」どうかは別の話です。

先の述べたように「本音」は「言いにくいこと」なのですから、伝えたいと思っても、言葉ではなくやはり「非言語」で伝えることから始まります。

「言いにくいこと」は自分から言うのではなく、相手に察して欲しいからです。例えば、チームのある同僚について話をしているときに、曇った表情をしたり、口ごもったりして、その同僚について非難の意を表現しようとします。

気になっていることがあっても「大丈夫」と言いながら、不安そうなかぼそい声だったりします。「言葉の意味」ではなく、「見た目」に注目して、ようやく表してくれているヒントを見つけましょう。

相手に言わせるのではなく代弁してみる



そして、彼・彼女が非言語で伝えてくるメッセージがわかってきたら、それをあなた自身が自分の言葉として代弁してみてはどうでしょうか。

相手がもし「最近の職場の雰囲気がギスギスしている」と感じていそうなら、あなたが自分の感想として「最近の職場はちょっとギスギスしているように見えるけどどう思う?」と振ってみるとか、相手が少し疲れていそうなら、これもあくまで自分の感想として「私にはあなたが少し疲れているように見えるけれどもどうかな?」という感じです(「あなたは疲れているよね」と断定してはいけません)。

もしそれがビンゴであれば「そ、そうですかね……確かに、少しそうかもしれませんね、例えば……」とやっと感じている本音を出してくれるかもしれません。

気持ちを推しはかれるくらいでなければダメ

もちろんこれはギャンブルです。まったく的外れなことを言うと「わかってくれていない」と思われるかもしれません。ただ、私が思うに、それは本当に「わかっていない」のですから仕方ないでしょう。

1on1ミーティングはあくまでも日頃のコミュニケーションを補うものであって、それをやっていれば相手がなんでもわかるわけではありません。

相手に対して仮説を持って臨んでそれを確認するくらいでちょうどいいと思います。メンバーが出してくれたヒントで気持ちがわかるくらいに相手を観察していなければ、そもそもコミュニケーション不足なのです。

もし推測が外れまくるのであれば……もっと相手のことに興味を持って、日頃から情報収集をしてみてはいかがでしょうか。
グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp


曽和利光=文

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