好きなことも社会との関わりがないと続かない
子供もわかるようになるべく現地語を使うようにしている。
収入以外にも得るものはあった。
「社会でいろんな仕事をしてくれる人がいるから、僕はこうやって世界を見せてもらえると思ってます。だから、もしただ長旅をしてるだけなら、いずれ自分に後ろめたさを感じてやめていたと思います。
それが、こうやって大道芸で現地の人を楽しませ、笑わせて、喜んでもらうことで、自分もその場所に還元できているって感じられるようになったんです」。
好奇心という自己満足と、人を楽しませ、喜んでもらうという地域への貢献が一体となり、岩崎さんの中でプラスの循環が生まれた。「世界を見たい」というシンプルな動機に加わった、新たなモチベーション。これが岩崎さんが21年間も旅を続けられている理由だ。
「好きなことでも、社会と関わりがないとやっぱり続けられないんだと思います」。
岩崎さんが「人力」にこだわる理由
岩崎さんの最終目標は「世界一周」だが、考えてみれば20年以上も旅を続けているのに、なぜまだ未達成なのかが謎である。実はここにも岩崎さんの強い哲学があった。
「ここまで時間がかかっているのは、僕のペースが遅いからです。僕の旅は人力以外の手段は使わないのがルール。陸路なら自転車で、海路なら手漕ぎボートです。
コロナのときは飛行機を使いましたが、それだと国と国のつながりが見えない。着いた先の景色は同じでも、やっぱり、地べたを這って進むからこそ溢れ出る感情があるし、目の前の道が次の国に続いてることもしっかり確認できるんです」。
ネパールでは未経験者ながらエベレストの登頂に成功した岩崎さん。
ネパールでチャレンジしたエベレスト登頂にも、岩崎さんは1年をかけている。
「標高2800mの村に飛行機で飛んで、そこから登るのが一般的ですが、僕は海抜0mの村から人力だけで行きました。1年かかりましたが、世界一の山の高さをしっかり感じることができました。ほとんど苦行なので、おすすめできませんが(笑)」。
4/4