たいていの人は穴だらけの話をしている
そのように考えるようになって、私は人の話を聴くのが少し楽になりました。相手が「しんどい」と言えば「しんどいんだ……」「大変」と言えば「大変なんだ……」と思えばよいだけで、いらぬ妄想や感情に頭を使わないので、頭の中がすっきりします。
そして、その分、相手の話に集中することができるようになってきました。そうすると、わかったことがあります。それは相手が実はどれだけ穴だらけの話をしているのかということと、それなのに自分がその穴を勝手な想像で埋めて解釈していたのかということでした。
このようなことは、多かれ少なかれ誰にでもあることでしょう。ただ、私はあまりにひどかったので、先輩たちから指導の対象となり、逆にそれに明確に気づくことができました。
部下が本当に言っていることを見据える
さて、ご相談者は部下の話を「傾聴」して、「会社のせいにして無責任な部下」と解釈して、腹が立って仕方がないということだったのですが、まず、疑ってみるべきことは、「部下は本当にそんなことを言っているのか」です。
例えば、「残業が辛い」と言っているだけなのに、「こんなに辛い残業をさせるような会社はどうかしている。おかしい!」と言っているように解釈していませんか。「残業が辛い」という言葉は「残業が辛い」という意味です(当たり前ですね)。
自分が責任感の強い人であればあるほど、「残業が辛い」と聴くと「そんなことを言う人は無責任だ」「どうすれば残業を少なくできるかを、自責で考えるべきだろう」などと考えてしまいそうです。
しかし、それは勝手な解釈です。本来は、言っていることだけをきちんと見据えるべきではないでしょうか。
相手に興味を持ち、わからないことを質問する
そうすれば、どうなるか。自分の勝手な想像による解釈に気づき、それを封じれば、相手の話が「わからないことだらけ」であることに気づきます。
それに気づけば、「わからないことを質問しよう」となるはずです。「残業がどのように辛いのか」「なぜ残業をしなければならない状況にあるのか」「残業をしていることをチームメンバーはどう思っているのか」などなど、相手が話していない「穴」を埋める質問がどんどん出てくるはずです。
そのように、まず相手が言っていることを、きちんと理解しようと思って質問を繰り出せば、「興味を持って聴いてくれている」と思うのではないでしょうか。
疑う心、責める心を排して聴けば、気持ちが変わるかも
この質問は単に抜けている「穴」について「わからないから」「知りたいから」聴くだけであり、勝手な想像からの解釈を確かめるものであってはいけません。
同じ質問でも後者の意図からされるものであれば、相手は「何か疑われている」「責められている」と感じてしまうことでしょう(実際、それは恐らく、根拠もないのに、勝手な想像から、疑ったり、責めたりしているのでしょう)。
勝手な想像を排することとは、自分自身の疑う心、責める心を排することでもあります。
そうして虚心坦懐に相手の話を聴けば、部下のことを誤解していたことがわかり、「腹立たしさ」ではなく「共感」や「申し訳なさ」や「支援したい気持ち」が生まれてくるかもしれませんよ。