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2022.12.31

ボルボ、テスラ、アウディ……2022年デビューの注目EV6台。目的に合わせて魅力を検証


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欧米に比べて、電気自動車の普及が進まないと言われる日本だが、2022年も海外からはさまざまな電気輸入車が上陸した。

まるで「そろそろ世界の潮流に乗るときでは?」と誘うかのように、2022年に現れた6台の黒船たちから、見えてくる電気自動車のキーワードを紐解いていこう。

「北欧で活躍するEV」ボルボ・C40リチャージ

ボルボC40。1モーター搭載車と2モーター搭載車があり、航続可能距離は434km〜485km

ボルボ「C40リチャージ」。1モーター搭載車と2モーター搭載車があり、航続可能距離は434km〜485km。


日本では「寒い冬に吹雪で動けなくなるのでは?」と電気自動車をためらう人が多いはず。しかし、世界で最も電気自動車が普及していると言われているのは、北欧のノルウェーだ。
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2021年の新車登録台数で電気自動車は64.5%を占め、2025年(もう2年後!)までにすべての新車販売を「排気ガス排出ゼロ車」にする方針が掲げられている。他の北欧、スウェーデンやフィンランドも2021年の新車登録台数で電気自動車が倍増した。

そんな電気自動車先進エリアの北欧・スウェーデンのボルボも、2030年までに新車販売の100%を電気自動車にすることを目標に掲げ、2022年1月から日本販売モデルとしては初の電気自動車「C40リチャージ」を発売した。本国では電気自動車のフラッグシップ「EX90」も発表されている。

実はノルウェー、電力の90%以上を水力発電でまかない、北海油田で採れる石油は輸出しているほどのエネルギー大国。

また国として電気自動車等については税金の免税や駐車場無料など政策面で後押しもしている。

日本から見れば羨ましい限りだが、指をくわえて眺めているだけでなく、そろそろ「じゃあ日本、どーするよ?」と考えさせられる一台なのだ。


「世界一売れているEV」テスラのモデルY 

テスラ モデルY。2モーターの4WDと、1モーターの2WD(後輪駆動)があり、4WDの航続可能距離は最大595km

テスラ「モデルY」。2モーターの4WDと、1モーターの2WD(後輪駆動)があり、4WDの航続可能距離は最大595km。


世界一の自動車販売台数はフォルクスワーゲンとトヨタがしのぎを削っているけれど、電気自動車に限ればテスラがダントツ。

2022年も絶好調だったようで、上半期(1月〜6月)の世界新車販売台数は前年同期に対して約1.5倍の56万台超。最も売れたのは「モデル3」だという。

残念ながら日本での販売台数は非公開となっているが、やはりモデル3が日本でもトップだと思われる。そのモデル3をベースにしたSUVが「モデルY」で、先の「最も売れたのはモデル3」の台数には、派生系であるモデルYも含まれている。

そんなベストセラーのSUVモデルが、2022年9月から日本でも納車が開始された。果たして2023年に世界一の電気自動車メーカーが日本でどう躍進するのか、注目だ。

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「ラグジュアリーな電気」を示したメルセデスのEQS

メルセデス・ベンツ EQS。航続可能距離は日本で販売されている電気自動車で最長の700km

メルセデス・ベンツ「EQS」。航続可能距離は日本で販売されている電気自動車で最長の700km。


エンジンのない電気自動車は、静粛性を重視するラグジュアリーモデルと本来は相性がいい。けれど、単にエンジンからモーターに載せ替えただけでは静かにはならない。

なぜなら、今までエンジン音にかき消されていたタイヤ音や風切り音などが副作用として耳に届くようになるからだ。

そこでメルセデス・ベンツは、従来の「Sクラス」の電気自動車版である「EQS」に対して、音対策を徹底した。

風切り音を減らすために、風洞実験を幾度も行い、デザイナーとともにドアハンドルの付け根などディテールまで詰め、量産車としては世界一低い空気抵抗値を実現。
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また隅々まで防音発泡材を詰めるなど、騒音・振動対策を徹底した。

こうしてエンジン車時代には見過ごされていた音まで遮断された、電気自動車時代のラグジュアリーカー。新しい静寂な世界は、この先どんな景色を見せてくれるのだろうか。


「エンタメを載せたEV」BMW・i7

BMW i7。航続可能距離は最大約600km

BMW「i7」。航続可能距離は最大約600km。


上記のEQSでは、新時代のラグジュアリーカーはどんな景色を見せてくれるのか?と問うたが、その解答例のひとつとして、BMW「i7」が提示してくれたような“エンタテインメント”があるかもしれない。

なにしろ先述の通り車内が静寂になれば、特に音響環境はエンジン車時代より格段に良くなるからだ。

だからi7は、イギリスの高級オーディオメーカー「バウワース&ウィルキンス」に依頼し、計39個ものスピーカーを用いたダイヤモンド・サラウンド・サウンドシステムを用意。

さらに、Amazon Fire TVを搭載した31インチの「BMWシアタースクリーン」を後席に設定した。

31インチの「BMWシアタースクリーン」

31インチの「BMWシアタースクリーン」


AppleのiMac(24インチ)よりデカいディスプレイが天井から現れる車内も凄いけど、それでストリーミングでも何でも、映像を良質な音ともに楽しめるなんて、新時代ならではかもしれない。

そういえばソニーも電気自動車に参入した理由のひとつはエンタテインメントだし、今後は電気自動車のマスト条件になる、かも!?


「150kW充電」を進めるアウディ・Q4 e-tronとVW・ID.4

アウディ Q4 40e-tron。航続可能距離は最大576km

アウディ「Q4 40e-tron」。航続可能距離は最大576km


2022年11月に販売が開始されたアウディ「Q4 e-tron」と、フォルクスワーゲン「ID.4」。

これまでは「電気自動車もガソリン車も作れる」というプラットフォーム(車の骨格)が多かったけれど、両ブランド初の「電気自動車しか作らない」という専用プラットフォームを採用した電気自動車だ。

上記メルセデス・ベンツ「EQS」や「RQE」もそうだし、トヨタ「bZ4X」や日産「アリア」……と、電気自動車時代に向けてギアがひとつ上がった感じだ。

そうやって電気自動車が当たり前になっていくと、「充電待ちが心配」という人もいるだろう。確かに今でも、休日のSAでは1回30分の急速充電器の前で列をなす車を見ることがある。

それを解決する方法のひとつが「150kW」の急速充電器の普及だ。SAにある急速充電器は50kWや90kW。

例えれば、水を出す蛇口が“細い”のだ。これは従来の電気自動車が、そんなに大食いじゃなかったことなどが要因。

フォルクスワーゲン ID.4。プロローンチエディションで航続可能距離は最大561km、ライトローンチエディションで最大388km

フォルクスワーゲン「ID.4」。プロローンチエディションで航続可能距離は最大561km、ライトローンチエディションで最大388km。


しかし世の中は急速に進み、1回の満充電で500km走れることが当たり前に。

そこで蛇口が太くて、速く一気に水ならぬ電気を流せる「150kW」の急速充電器を、ポルシェとアウディ、フォルクスワーゲンの3社が共同で推し進めることになった。

例えば100km走るための充電時間は、50kWなら約20分かかるが、150kWなら約6.5分で済むという(アウディのスポーツカー「e-tron GT」の場合)。

ちなみにテスラの急速充電器「スーパーチャージャー」は120kWで、最近250kWも登場してきて話題になっている。

一方で電気自動車側も“大きな蛇口”に対応できなければその恩恵を享受できない。航続可能距離だけでなく、充電環境の進化からも目が離せなそうだ。

籠島康弘=文

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